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相続・事業承継Vol.61 節税と思ったらダブル課税に!

節税と思ったらダブル課税に!

相続・事業承継Vol.61

 

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

税理士が指南した節税対策が、逆に二重に課税される結果となった税務裁判がありました。
(大阪高裁令和4年7月20日判決、国税不服審判所令和5年6月13日裁決)

裁判資料によると、父の将来の相続税負担を心配した子が、税理士に節税対策を依頼したようです。税理士は、父が所有している貸駐車場に着目し、駐車場の収入を子に移転することを考えました。駐車場収入を子に移転することの効果としては、まず、父の所得税を節税できることが挙げられます。さらに、父に蓄積するはずであった駐車場収入を子に移転しますので、父の財産の増加を抑制することができ、その結果、将来の相続税の節税も達成できます。

その節税の手法として下記の方法を提案したようです。

  • 駐車場の土地を子に使用貸借により貸し付ける。(使用貸借は、無償又は固定資産税等の実費相当額で貸借することです。)
  • 土地に敷設したあったアスファルト舗装を子に贈与する。(構築物という固定資産を贈与。)
  • 上記対策後に入金された駐車場収入は、子の口座に入金させる。
  • 子は、駐車場収入を自らの収入として確定申告する。

その後、税務調査があり、子が申告した駐車場収入は、父が申告すべき収入であるとして、父に所得税の更正処分をしました。さらに、課税処分は所得税だけに留まらず、税務当局は、子に入金された駐車場収入に着目します。本来は父の口座に入金されるべき駐車場収入が子の口座に入金されたので、父が子に対して贈与をしたとみなし、贈与税の更正処分も行いました。

節税策を講じたのですが、所得税と贈与税を二重に課税されてしまうという悲劇が起こってしまいました。

なぜ、贈与税も課税されるのでしょうか。
根拠条文として、相続税法第9条に規定されています。

相続税法第9条

・・・対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額()を当該利益を受けさせた者から贈与()により取得したものとみなす。・・・


つまり、子は、対価を支払わないで、父が収受すべき駐車場収入に係る利益を受けたため、相続税法9条に基づき、贈与税が課税されるということになりました。

ここで、子は、アスファルト舗装という構築物を贈与により取得しているため、負担はしているはずだと思われる方もいると思いますが、裁判所等は、アスファルト舗装は土地の一部であり、別個の所有権として認識はできないため、当該アスファルト舗装の贈与契約自体が無効であると判断しました。その上で、駐車場土地を子に使用貸借している契約の範囲内には、土地だけではなくアスファルト舗装部分も使用貸借の範囲に含まれると判断しました。その結果、子が特段の出捐をした状況は認められないことから、父が土地の所有権の帰属を変えないまま、何らの対価も得ることなく、そこから生じる法定果実の帰属を子に移転させたものと評価し、贈与税課税を是認しました。

現状、建物を移転する節税対策は認められていますが、それより簡易的な方法であるアスファルト舗装を移転すれば節税できると思ったところに、落とし穴があったようです。

やはり、超えてはいけない一線がありますので、皆様も節税対策を行う場合は、資産税に詳しい専門家を選択することをお勧めします。