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相続・事業承継Vol.49  資産管理会社の活用(応用編その2)

資産管理会社の活用(応用編その2)

相続・事業承継Vol.49

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

前回のSUレター(相続事業承継Vol.46)で紹介した資産管理会社の活用法の続きです。
※バックナンバー
資産管理会社の活用法(基礎編その1)
資産管理会社の活用法(基礎編その2)

資産管理会社の活用法(応用編その1)

前回のSUレターでは、個人オーナーの所得を不動産管理会社に移転させるための方法として、最も所得移転ができる方式 不動産所有方式 の留意点を説明しました。今回はその続きになります。

 

留意点3 売却価額は時価で行いましょう

 建物を法人に移転する際の売却価額が、時価とかけ離れている場合、下記の税務問題が発生します。

<売主側>:個人(所得税)

①【売却価額<時価の2分の1】の場合

「みなし譲渡課税」時価で譲渡したものとみなして、譲渡所得税が計算されます。

②【売却価額≧時価の2分の1】の場合

売却価額を時価とみなすため、所得税は課税問題が発生しません。

 

<買主側>:法人(法人税)

時価より低い価額で譲受した場合、時価と譲渡価額の差額は受贈益課税されます。

時価はどう算定するか?

時価の算定方法は数多くありますが、実務上は下記の方法で算出することが多いです。

法人税基本通達9-1-19(減価償却資産の時価)では、資産の再取得価額から旧定率法の減価償却を控除した価額を時価として認めています。

 (定率法の方が適切な時価を反映している場合は、定率法も可) 

 ※再取得価額=再建築価額(1㎡当り)×建物の床面積

※再建築価額の参考資料:建物の標準的な建築価額表(国税庁)、建築統計月報(国土交通省)など

 

 その結果、建物の時価は通常簿価に近いとも言われていますので、課税上の弊害がない限りは上記方法を使うことができます。しかし、売却価額の算定には時価とかけ離れていないか細心の注意を要します。

 

 留意点4.譲渡所得税

(売却価額―取得費―譲渡費用)の結果、譲渡益となった場合は、譲渡所得税が課税されます。

   譲渡益:長期保有 約20% 短期保有 約40%

   譲渡損:切捨て(他の所得との損益通算はできない。同所得内は通算可)

 

留意点5.2年後の消費税の課税関係に注意

建物を法人に売却した場合、建物売却価額が1,000万円を超えると2年後に消費税の課税事業者に該当します。

もちろん、その年に課税売上が発生しなかった場合は、消費税を納付する必要はありません。

店舗や事務所などの消費税が発生する家賃収入がある場合は、消費税の申告をする必要がありますが、簡易課税を選択することにより有利になる場合があります。

 

留意点6.不動産の移転に係る諸費用 

不動産の移転の際には、譲渡所得税だけでなく、登録免許税、不動産取得税、印紙税などの流通税が発生しますので、これらの税金も含めてシミュレーションすることが重要です。

 

留意点7.契約書の整備

 将来の税務調査に備えて、下記の書類の整備をしましょう。

  •  売買契約書を作成する
  •  所有権移転登記や売買代金の授受をする
  •  家賃入金口座の変更、テナントとの契約書の書き換え
  •  公共料金や火災保険の名義書換など

 

留意点8.譲渡のタイミング

・譲渡益が発生する場合は、含み損を抱えた土地を売却することによって損益通算が可能になります。反対に、譲渡損が発生する場合は、含み益を抱えた土地を売却することも検討しましょう。

 ・相続により取得した不動産を法人に移転する場合は、「相続税の取得費加算制度」を活用するといいでしょう。

 ・譲渡所得税の節税のために、事業用資産の買換え特例を活用することも検討しましょう。