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相続・事業承継Vol.46  資産管理会社の活用(応用編その1)

資産管理会社の活用(応用編その1)
~個人から法人へ~

相続・事業承継Vol.46

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

 

前回のSUレター(相続事業承継Vol.42)で紹介した資産管理会社の活用法の続きです。
前回のSUレターでは、個人オーナーの所得を不動産管理会社に移転させるための方法として、①管理料徴収方式、②転貸方式、③不動産所有方式の3つの方式を紹介しました。

この中で、最も所得移転ができる方式は③不動産所有方式です。

今回は、その不動産所有方式を採用する場合の留意点を説明します。

 

留意点① 会社に既存賃貸建物を譲渡する

  移転させる財産は建物を優先に

 法人に土地を売る場合、買取り資金の工面や不動産所得税・登録免許税のコスト、譲渡所得税の負担を考えると、多額の資金負担が必要となるケースが多いです。そのため、資金負担をなるべく抑え、かつ、所得分散をするために、土地よりも建物の移転を優先したほうがいいでしょう。

資金負担を最小限に抑える

所得の分散効果を最大限に利用する

建物を移転

 

留意点② どのような建物を移転させるか

 建物を移転すると決めた場合、どの建物を移転したらいいのでしょうか。税金対策の観点からは、高齢オーナーは、相続税対策を優先し、若いオーナーは所得税対策を優先したほうがいいでしょう。

 

 A.相続税対策を優先する場合(高齢オーナーなど)

  •  相続税評価額と時価を比較しましょう

 賃貸建物の相続税評価額は下記の算式で計算されます

建物の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0 

貸家の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0×(1-借家権割合30%×賃貸割合)

 なお、アパート等の固定資産税評価額は通常建築価格の60%前後といわれています。

仮に、手元資金1億円で賃貸用アパートを建設した場合の相続税評価額を算出してみます。

 

(前提条件)

・手元資金1億円で賃貸用アパートを建設

 ・固定資産税評価額6,000万円

・建設後賃貸し、満室

(計算式)

6,000万円×1.0×(1-30%×100%)=4,200万円(相続税評価額)

 

 相続税の計算上は、1億円(現金)が4,200万円(不動産)の評価に変わります。そのため、一般的には、建築価格(時価)の30~50%程度が相続税評価額となるといわれています。

 

  •  築年数の古い建物から移転を検討しましょう

  築年数が浅い・・・建物の相続税評価額<時価 の傾向

  築年数が古い・・・建物の相続税評価額>時価 の傾向

 建物を法人に移転する場合、時価で譲渡する必要があります。築年数が古い建物の場合、相続税評価額より低い価額で会社に移転することができ、相続税の評価上、メリットを享受することができます。

また、築年数が古い場合、借入の返済も終了しているケースが多いため、収益性の観点からも法人に移転するメリットがあります。

 

 B.所得税対策を優先する場合(若いオーナーなど)

     収益性の高い物件から移転しましょう。理想をいえば、収益が多額で、借入残が少ない物件がいいですが稀なケースかもしれません。

 

    Aアパートの年間収益200万円

 Bアパートの年間収益500万円

      ⇒Bアパートを移転したほうが所得の分散を図れます

 

<結論>

 ①築年数が古く、②収益性の高い、③建物 から移転を検討しましょう