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国際税務Vol.41  米国資産税等について-バイデン政権の影響-

米国資産税等について

-バイデン政権の影響-

国際税務Vol.41

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。

今回は米国の遺産税・キャピタルゲイン税についてのお話です。

日本では相続税の基礎控除は、3000万円+600万円×法定相続人の数ですよね。

では米国の遺産税の基礎控除額はいくらか知ってらっしゃいますか?

 

非課税枠と租税条約

米国市民、米国居住者については、1170万ドル(約12億7000万円、2021年)です!!驚きの金額ですよね。

対照的に、米国非居住者の場合は6万ドル(約650万円)の非課税遺産枠が適用されます。米国居住者と比較すると極端に低い金額です。

しかし、日本国籍を有する米国非居住者には特例があり、日米相続税条約により米国の非課税遺産額を適用する特例計算が認められます。

すなわち、米国内遺産が全世界遺産に占める割合を非課税遺産額に掛け合わせた金額を6万ドルの代わりに非居住者の基礎控除として使うことができます。

具体的には下記のような算式です。

<1170万ドル×米国遺産額/全世界遺産額>

相続資産全体のうち米国に財産が多ければ米国での課税は無い場合が多いでしょう。

※ただし、これは連邦遺産税の話ですから、州遺産税については各州により異なりますので確認が必要となります。

 

しかし、昨年の大統領選挙により民主党のバイデン政権となり、米国は富裕層や企業に対しての課税強化に動いています。

予算教書
バイデンは、2021年5月28日、2022会計年度の予算教書を公表しました。

歳出規模を6兆110億ドルとしましたが、これは戦後最大規模となります。

この予算教書では、いわゆる「大きな政府」として経済活動に介入するとともに、その財源ともなる税財政を強化することが確認されました。

今回の予算教書では、当初想定されていた非課税枠を549万ドル(約6億円)に縮小したうえで、遺産税率を40→65%とする案は見送られました。

昨年末は、この縮小案が出ていたため富裕層の間で慌てて贈与などを実行する方が多かったと聞いています。

今回は見送られましたが、今後いつ再浮上するかわかりませんね。

 

今回提案されている税制改正案の中で、富裕層に関係するものはいくつかありますが、大きく影響する可能性のあるものとして、STEP法というものがあります。

 

STEP

STEP法は、死亡時に含み益のある高額資産に対して、時価で売却されたものとみなして、キャピタルゲイン税を課すものです。現在米国では、評価の高い資産を相続する相続人は、その資産を時価まで無税でステップアップして受け取ることができます。つまり、相続人は被相続人の死後すぐにその資産を売却することができ、その際に所得税を支払う必要がありませんでした。

日本の税制では考えられない制度ですね。

 

日本では、含み益課税はありませんし、相続した不動産を売却する場合に、いつ取得したものか不明な場合、原則売却価額の5%しか取得原価として認められず、残りの95%に所得税が課税されます。

日本とは対照的に米国の富裕者は、大きな非課税枠があるおかげでで相続時には遺産税はかからないうえ、相続後の譲渡にも所得税はかからないという状況でしたから、富裕層への課税強化として提案されています。

ただ今回の税制改正案についてはバイデンと同じ民主党の議員からも反対や懸念を示していますので、成立するかどうかはわかりません。

今後のバイデン政権の動向を注視する必要がありますね。

 

準備が大事

税制がどうなるかも重要ですが、米国に財産をお持ちの方は相続対策とともに、相続発生時の専門家の体制準備を考えておくことも非常に重要です。

なぜなら、通常の相続であっても申告期限までの10か月間はあっという間ですから、財産が日米にある場合や相続人が日本だけでない場合にはなおさら時間がかかります。

相続人が相続発生後一から専門家を探して選択するという場合には、思わぬ税金や多額の専門家費用が発生することになる可能性があります。
したがって、生前から相続後の米国の手続き、日本の手続き、税金を納められる状態にあるか、その他税務リスクはないかといったことについて検討、体制づくりをすることをお勧めいたします。