国際税務Vol.34 外国人労働者の税務~源泉徴収と確定申告~
外国人労働者の税務
国際税務Vol.34
~源泉徴収と確定申告~
新年あけましておめでとうございます。
昨年もSUレターをご愛読頂きありがとうございました。
本年も皆様のお役にたてる記事をUPしていこうと意気込んでおりますので引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは、今年最初の記事は「外国労働者の税務について」。
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今週は国際税務がテーマになります。
あるお客様から、下記のような質問がありました。
「外国人労働者を雇いますが、給与の支払いの際、源泉税をいくら徴収する必要がありますか?
また、その労働者は母国で不動産に投資しており、賃貸収入を得ているが、別途、確定申告が必要でしょうか?」
一緒に確認していきましょう。
居住者か非居住者か
外国人労働者が日本の居住者になるか、非居住者になるかで源泉税の取扱いや確定申告の有無に影響があります。
居住者とは、国内に住所(生活の本拠)を有し、又は現在まで引き続いて1年以上国内に居所を有する者とされています。
ただし、住所を有するか判断が難しい場合、
外国人労働者が継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること
により、居住者として推定されます。
居住者の場合
日本人労働者と全く同じ取扱いとなります。
給与所得の源泉徴収税額表に基づき、給与等から源泉徴収を行い、年末調整を行って課税関係は終了となります。
ただし、不動産収入など給与以外に少額でない所得が発生している場合などには、別途確定申告が必要となります。
その際、外国人労働者が永住者か非永住者かにより、海外の所得(国外源泉所得)を含めるかが変わります。
・居住者の内、非永住者は国内+α
居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、
過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下の個人が非永住者となります。
非永住者の場合には、国内源泉所得だけではなく、
国外源泉所得のうち国内で支払われたもの・国外から送金されたものに対して課税されます。
そのため、事例のような国外の不動産の賃料が国内の口座に振り込まれた場合や、
国外の口座に振り込まれたものを国内の口座に移した場合には、それらを含めて確定申告を行います。
・居住者の内、永住者は全ての所得
非永住者以外は永住者となります。
永住者については、全世界所得(国内源泉所得+国外源泉所得)に対して課税されます。
そのため、支払場所に関わらず、国外の不動産収入も含めて確定申告となります。
非居住者の場合
給与等の支払に対して20.42%の源泉税を徴収する必要があります。
また、年末調整は行えず源泉徴収だけで課税関係は終了となります。
給与以外に収入がある場合には、国内源泉所得のみ確定申告を行います。
そのため、国外の不動産収入を含める必要はありません。
その他留意点
非居住者の源泉税や確定申告を考える際には、外国人労働者の母国との租税条約を確認する必要があります。
租税条約によっては、源泉税などが減税・免税となる場合や短期滞在者免税の適用も考えられます。
(短期滞在者免税については国際税務Vol.2 海外出向者の一時帰宅時の税務)
非居住者に対する源泉税については、専用の納付書(非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書)があります。
また、源泉徴収票とは別に非居住者等に対する支払調書がありますので、法定調書を提出する際には注意が必要です。
その他、労働者が国外の配偶者・扶養親族について配偶者控除等を受ける際には、親族関係書類と送金関係書類が必要となります。