国際税務Vol.33 ファーストクラスを利用しても非課税?~外国人役員には特別規定があります~
ファーストクラスを利用しても非課税?
国際税務Vol.33
~外国人役員には特別規定があります~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
先日、お客様からこのようなご質問を頂きました。
「当社は、日本法人ですが、この度、海外に本社がある大手企業に買収されました。
その結果、当社は、海外会社の日本子会社となり、海外親会社から社長が出向してきました。
その外国人社長Aより、ホームリーブ(休暇帰国)規定を策定するように命じられ、
グループ会社共通のホームリーブ規定を導入する予定となっています。
そのホームリーブ規定では、社長及びその家族が夏休みで休暇帰国する際に、
ファーストクラスを利用することを認めています。
この費用を会社負担した場合は、外国人社長Aは日本の税務署から給与課税されるのでしょうか。」
<回答>
外国人社長Aがホーム・リーブ(休暇帰国)する際のファーストクラス運賃を御社が負担した場合、
御社の企業規模や社長Aの役職等を総合勘案して、社会通念上相当とされるのであれば、
家族の分も含めて、非課税として処理することができます。
役員の個人的費用を会社が負担する場合
会社が、役員の個人的な費用を負担した場合は、経済的利益の供与とみなされて、
その役員に対して給与所得として課税されるのが原則です。
ホーム・リーブ通達
原則として、役員に対する経済的利益は給与課税されますが、
日本に勤務する外国人に対しては特例があります。
それは、国税庁の通達で「ホーム・リーブ通達」といわれるものがあるからです。
正式名称は、「国内において勤務する外国人に対し休暇帰国のため旅費として支給する金品に対する所得税の取扱いについて」
という通達で、個人的な旅行費用のうち、一定のものについては、例外として非課税として取り扱ってよいと規定されています。
この通達には、下記のことが規定されています。
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使用者が、国内において長期間引続き勤務する外国人に対し、
就業規則等に定めるところにより相当の勤務期間(おおむね1年以上の期間)
を経過するごとに休暇のための帰国を認め、その帰国のための旅行に必要な支出
(その者と生計を一にする配偶者その他の親族に係る支出を含む。)に充てるものとして支給する金品については、
その支給する金品のうち、国内とその旅行の目的とする国
(原則として、その者又はその者の配偶者の国籍又は市民権の属する国をいう。)
との往復に要する運賃(航空機等の乗継地においてやむを得ない事情で宿泊した場合の宿泊料を含む。)
でその旅行に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる
通常の旅行の経路及び方法によるものに相当する部分に限り、課税しなくて差支えない。
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なぜ、このような取り扱いをするのでしょうか。
この通達の趣旨説明には、下記のことが記載されています。
「本国を離れ、気候、風土、社会慣習等の異なる国において勤務する者について、
使用者が、その者に対し休暇帰国を認め、その帰国のための旅行の費用を負担することとしている場合があるが、
その休暇帰国はその者の労働環境の特殊性に対する配慮に基づくものであることに顧み、
使用者がその旅行の費用に充てるものとして支給する金品については、
強いて課税しないこととするのが相当と認められるからである。」
つまり、外国人勤務者の労働環境の特殊性に配慮してこのホーム・リーブ通達を規定したということです。
ファーストクラス費用は
ファーストクラス費用は一般的には高額になりますし、
さらに家族分も会社が負担して給与課税されないのかという疑問がありますが、
当該企業が、例えば、世界的に有名な企業であり、かつ、外国人社長の社会的立場を考慮すると、
航空機を利用する際にはファーストクラスを利用するのが通常とされているのであれば、それば通常の旅行の方法として、非課税扱いされると考えられています。
日産自動車のゴーンさんは、ファーストクラスを利用しても非課税なのかもしれませんね。