国際税務Vol.32 海外取引先への支払に関する源泉徴収を間違えた場合~還付手続きが必要です~
海外取引先への支払に関する源泉徴収を間違えた場合
国際税務Vol.32
~還付手続きが必要です~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
先日、お客様からこのようなご質問を頂きました。
「当社は、A国の取引先へロイヤリティの支払をする際に、
所得税法の規定により20.42%の税率で源泉徴収を行っていました。
その後、社内調査により、日本とA国との間では租税条約の適用を受けられるのに、
この適用を受けていないことが判明しました。
この事態に際して、救済措置はあるのでしょうか。」
<回答>
A国の取引先へ支払ったロイヤルティに対する過大納付は、租税条約の適用を受け救済措置があります。
手続きとしては、A国の取引先が御社を経由して御社の管轄税務署長に対して、
「租税条約に関する届出書」と、「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出することにより、
過大納付となった源泉徴収税額の還付を受けることができます。
所得税法と租税条約の関係
海外取引先の国と日本との間に租税条約が締結されている場合は、
国内法である所得税法よりも租税条約が優先して適用されます。
租税条約が締結されており、その条約の適用を受ければ源泉徴収税額が軽減されるにもかかわらず、
その適用を受けていない場合には、過大に源泉徴収された税額について、租税条約の適用を受けることにより還付を受けることができます。
租税条約が国内法に優先するにもかかわらず、租税条約の税率を適用して源泉徴収できなかったのは、
国内の支払者が所轄税務署長に「租税条約に関する届出書」を提出しなかったことに基因します。
ただし、本来は、「租税条約に関する届出書」の提出は、国内法で規定している手続規定ですので、
その書類の提出の有無は、租税条約の適用を受けること自体と関係ありません。
しかし、税務署の取扱いとしては、「租税条約に関する届出書」の提出が無い場合は、
租税条約の適用が受けられないと回答する場合が多いですので、やはり事前に忘れないように提出しましょう。
具体的な手続き
所得を受ける海外取引先は、源泉徴収義務者である御社を経由して、
「租税条約に関する届出書」と、「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出することにより、
過大納付となった源泉徴収税額の還付を受けることができます。
また、還付手続きには、これらの書類に加えて、
実際に源泉徴収税額を納付した納付書や、
契約書の写し、
総勘定元帳などの書類
が必要になります。
「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出すれば、
自動的に税務署から還付されるのではなく、税務署内で審理をしますので、
必要書類の要求が頻繁に行われる場合もあります。
この還付手続きは、税務署とのやり取りに多くの時間を要する場合がありますので、
海外取引先への支払は、当初から税務面に注意しながら行う必要があります。