国際税務Vol.31 代理人PEの範囲の見直しによる影響
代理人PEの範囲の見直しによる影響
国際税務Vol.31
皆様こんにちは。
平成30年税制改正で恒久的施設(Permanent Establishment、以下「PE」)の範囲が拡大されたことにより、
外国企業のビジネスモデルが大きく揺さぶられることになりそうです。
改正についての論点がいくつかある中で、今回は代理人PEの範囲の見直しについてお話したいと思います。
外国企業が日本の代理店を通じてコミッショネア取引(問屋取引)を行う場合、
独立した代理店であるという一定の要件をクリアしない限り、
代理店が外国企業のPEと認定され日本で法人税が課税されることになります。
PEとは
外国企業が他国において事業を行うために有する支店、出張所、事業所、工場等を指します。
それに加えて建設、据付け、組立て等の作業、またはその指揮監督の役務の提供を1年を超えて行う場合は建設PEに該当し、
外国法人を代表して契約を締結する権限を持つ者が国内で反復して権限行使しているような場合は、その者が代理人PEとみなされます。
「PEなければ課税なし」という国際課税原則のもと、
外国企業が日本において事業を行っていても、
日本にPEを設けていなければ日本で課税されることはありません。
コミッショネア(問屋)取引とは
委託者の名義で取引を行う通常の代理取引と異なり、代理人が自らの名義で取引を行い、
取引による損益は委託者に帰属する一方で代理人は手数料をもらう取引を言います。
商品の所有権は委託者に帰属し、在庫リスクは委託者が負います。
従来の取扱い
外国法人が日本国内にその外国法人の名義で契約を締結する権限を有している者等を有している場合は、
一般的にその者は外国法人の「代理人PE」として取り扱われてきました。
コミッショネア取引では、代理人が自らの名義で取引を行うため、PE認定から逃れることができました。
代理人は在庫リスクを負わないため、委託者から得るコミッションフィーは販売取引から得られる利益よりも低くなります。
このスキームを用いることにより、外国法人が現地国において課税所得を圧縮することが可能となることが問題視されてきました。
改正後の取扱い
外国法人のために契約を締結する権限を有していない場合であっても、
日本国内でその契約の締結に関して反復して主要な役割を果たしている者がいるときは、
外国法人の代理人PEとして取り扱われることになります。
すなわち、契約の権限を持たず自らの名義で取引を行っていても、
主要な役割を果たしていればアウトとなってしまうのです。
コミッショネア取引を狙いうちしたかのような改正になっています。
上記の取り扱いについて、租税条約上国内法のPEと異なる定めがある場合は、租税条約上の定義が優先されます。
この規定は2019年1月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。
どんどん国際的租税回避を封じるべく包囲網が整備されてきています。
既存のビジネスモデルを見直すと同時に、新しいスキームを実行する場合もより慎重な検討が必要です。