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国際税務Vol.30 どちらの国で納税するか?-二国間での勤務-

どちらの国で納税するか?-二国間での勤務-

国際税務Vol.30

 

 

皆様こんにちは。

 

国際的な人的交流が活発になり、日本で働く外国人、海外で働く日本人共に増加傾向にあります。

海外で働くとなると、当然現地の税制が適用され課税されることもあるのですが、

一方で日本でも場合によっては課税が発生し、一体どちらに納税したらいいの?

と困惑してしまうケースがあるかと思います。

 

今回は二ヶ国にわたる勤務についての税金についてお話したいと思います。

 

海外に短期派遣された場合

Aさんは4ヶ月アメリカの子会社に技術指導のため派遣されることになりました。

給与は日本の親会社が負担します。

この場合どちらの国で課税されることになるのでしょうか。

やはり勤務地であるアメリカでしょうか?

結論から言いますと、Aさんは日本で課税されます

日米租税条約においては「短期滞在者免税」の規定があり、以下の3つの要件を全て満たす場合には免税となります。

 

(a) 当該課税年度において開始または終了するいずれの12カ月の期間においても他方の国に滞在する期間が合計183日を超えないこと

(b)報酬が他方の国の居住者でない雇用者またはこれに代わる者から支払われるものであること

(c)報酬が他方の国に存在する雇用者の恒久的施設によって負担されるものでないこと

 

少々わかりにくい書き方になっているのですが、

(b)はすなわち派遣されている現地企業から給与が支払われていない

(c)は派遣されている現地企業の恒久的施設(支店等)から支払われていない

という要件になります。

 

Aさんの場合、滞在日数が183日以下であり、給与の支払は(b)(c)どちらでもないため、

短期滞在者免税が適用され、アメリカで勤務していても現地における課税は免除されます。

 

海外に長期(半年以上)派遣された場合

それでは滞在期間が9ヶ月となった場合はどうなるのでしょうか。

上記(a)の要件を満たしていないため、免税の適用を受けることができなくなり、

アメリカで課税されることになります。

一方で、Aさんが日本の居住者として認定されれば、

居住者は全世界所得が課税対象となるため、日本においても課税されることになります。

 

居住者とは

日本の税法において居住者とは、日本に「住所」があるか、

または現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人としています。

何をもってこの「住所」「居所」と言うのかは明確な定義がなく、

住所は例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断する、

という一定のガイドラインを頼りに実態に応じて総合的に判断していくことになります。

実務上1年以内の海外勤務だと居住者と判断される可能性は高くなります

この論点については非常に奥が深いので、詳細についてはまた別の機会にとりあげてみたいと思います。

 

二重課税が発生した場合

日本、アメリカ両国において課税が発生した場合でも、

二重課税を排除するために外国税額控除制度が設けられています。

日本において確定申告をする際に納税額から差し引くことができるため、

忘れずに手続きをすることが重要です。

 

まとめ

海外で勤務する場合、期間や相手国、相手国との租税条約の有無などによって税金の取扱いは様々ですので、

事前にしっかりと検討することが重要となります。