国際税務Vol.28 海外出向の負担金 -寄附金課税を防ぐために-
海外出向の負担金 -寄附金課税を防ぐために-
国際税務Vol.28
皆様こんにちは。
日本の企業が海外の子会社へ従業員を出向させる場合、
その費用負担について留意しないと思わぬところで課税リスクが発生することがあります。
出向者の給与負担
出向者が海外子会社でのみ労務提供をしているのであれば、
海外子会社が出向者の給与を全額負担することが原則となります。
もし日本の親会社が直接給与を支払う場合は、
出向先の海外子会社から給与負担金を受け取る必要があります。
ただし、日本親会社が海外子会社との間の給与の差の部分として負担した金額については、
両者の給与条件の較差を填補するものとして合理的な金額が日本親会社の損金に算入されることになります。
例えば出向先が新興国であった場合、現地の給与水準と日本における給与に差がある場合、
海外子会社が出向者の給与を全額負担すると現地の経営を圧迫することになるため、
その差額を日本の親会社が負担するケースはよくあることと思われます。
寄附金認定のリスク
このようなケースにおいて、
日本親会社が海外子会社から受取る給与負担金が少ないと課税当局から指摘を受ける事例があります。
日本親会社が較差補填をしている部分を寄附金として課税しようとするのです。
こうした場合に備えて、本当に補填をしているという事実をしっかりと説明できるようにしておかなければなりません。
リスク軽減のための対応
日本親会社が負担している較差補填部分が合理的な金額であれば、
損金算入は認められるはずなので、それを証明するためのドキュメンテーションが必要となります。
まず重要なのは、出向者が海外子会社で雇われた場合の給与の金額を客観的に算出することです。
海外子会社の給与規定や他の従業員(出向者と同レベルの職位の者)の給与データを基準にすることが妥当です。
子会社の規模が小さく明確な給与規定がない場合は、
現地の会計事務所に業界の一般的な給与水準を教えてもらうことも有効です。
出向契約書は必ず作成し、出向期間、現地における職務、子会社の負担額等を明記しておきましょう。
また、グループ間取引に関するポリシーやガイドラインなどを書面で整備しておくことも重要となります。
それに基づいて取引を行っていると説明できれば説得力が増し当局の理解も得られやすくなるでしょう。
まとめ
当局から指摘された場合に、理路整然と説明できるよう事前に準備しておくことは非常に重要です。
出向が決まったらお早めに対応されることをお勧めいたします!