相続・事業承継Vol.31 国際相続その4 財産が日本以外の場合
国際相続その4 財産が日本以外の場合
相続・事業承継Vol.31
こんにちは。
今回は、国際相続の最終回として、より“相続税”にフォーカスして、財産が日本以外にある場合について、
次の点をご紹介します。(前回までの内容はコチラ)
・不動産の評価
・預金の評価
・ジョイント○○
・財産の計上漏れ
不動産の評価
日本の場合、土地は路線価評価や倍率評価、建物は固定資産税評価額で計算します。
しかし、当然、これらは海外の不動産には通用しません。
そこで、「現地の業者から時価を取得」することになります。
ちなみに、ご存知の方も多いと思いますが、日本では不動産の価値における土地の割合が高いですが、
海外ではそうとは限りません。
預金の評価
日本の場合、金融機関に依頼して、相続開始時点の残高証明書を取得します。
この時、定期預金などの場合には「未払の利息も含めたもの」を発行してもらいます。
海外の場合も同様です。特に、海外の場合には、預金の利率が日本より比較的高い場合が多いため、
すべての口座について「未払の利息も含めたもの」を発行してもらった方が良いと思います。
なお、「相続開始時点の残高と、前回の利払い日から相続開始時点までの未払の利息を記載した残高証明書」を発行してもらう、
というのを正確に伝えるのが難しいです。
ジョイント○○
日本の“共有”に響きが似た制度で“合有(ジョイント)”というのが多く存在します。
例えば夫婦である不動産を合有で持つ場合、夫が亡くなった場合、妻に持ち分が移転します。
このように不動産の合有であるジョイントテナンシーや預金口座の合有であるジョイントアカウントがあります。
「夫が亡くなった場合、妻に持ち分が移転します」というのは、すなわち、“遺贈”として取り扱われます、
ということになり、つまり妻に相続税が係る可能性が発生します。
(参照 国税庁質疑応答)
なお、生前に、“お金を出したのは片方だが、合有にした”ような場合には、
その時点でお金を出した方から出していない方に贈与が起きたことになります。
財産の計上漏れ
「海外だとどうなるの?」と疑問を挙げると他にもキリがありません。
でも、最も頻度が高くて、重要だと思うのは、「財産が漏れていないか」ということです。
皆様は、親の財産が、どこになにがいくらくらいあるかご存知でしょうか?
100%把握していることはほとんどありませんよね。
これが、ドメスティックに生きてこられた方ならまだしも、
海外に居住経験があったり、投資経験が豊富な富裕者になればなるほど、把握できる確率はさらに下がるでしょう。
一般的な相続税の税務調査での指摘も、
(名義預金を含めたものですが)“計上漏れ”にあることからも、
そもそもこの「財産が把握できるか?」ということが大きな課題です。
税務署は過去の海外送金履歴を把握していたり、
最近では国際間の口座情報の交換が始まっているため、
相続人が知らない財産を把握している場合があります。
まとめ
今回で国際相続のお話も終わりです。総括すると、ポイントは次の2点だと思います。
・手続きや制度はまるっきり違うが、何とかなる
・ただし、手間や費用が掛かる
なかなか言いずらいことですが、国際相続が心配な方は、これをきっかけに身近な方に少しお話しされてみてはいかがでしょうか。