ブログBlog

相続・事業承継Vol.28 国際相続その1 国際相続とは?導入編

国際相続 その1 国際相続とは?導入編

相続・事業承継Vol.28

 

こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の押味です。

 

弊社でも国際相続案件を受託しておりますが、一筋縄ではいきません。

普通の(?)相続でも一筋縄ではいかないのに、国際相続となるとさらに難航します。

今回から4回にわたって、この国際相続をテーマに、相続発生から申告に至るまでの様々なトピックスを紹介していきたいと思います。

 

今回はまず導入編として、

・そもそも国際相続とは?

・世界の相続税

・何が普通と異なるのか?

の3点をご紹介します。

国際相続と聞いてもピンとこないことも多いと思いますが、結構身近に潜んでいます。

ご自分には関係ないと思っている方も一度はご確認いただいた方が良いと思います。

 

そもそも国際相続とは?

国際相続といっても定義はありませんが、

①相続人や被相続人が日本国外にいる、あるいは、国籍が日本以外である

②相続財産が日本国外にある

相続を指すことが多いです。

そうすると、例えば、

・自身が海外に単身赴任中だ

・子供が海外留学中だ

・子供が国際結婚している

・両親がハワイ不動産に投資している

…など、意外と該当する可能性があると思います。

 

世界の相続税

ここで、国際相続、相続税の混乱の一端を知るために、世界の相続税の制度をみてみましょう。

こちらの財務省HPをご覧ください。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/itn_comparison/j05.htm

ここでは主要国の相続税率の比較がされておりますが、注目したいのはグラフ下の注書きです。

例えば(注5)や(注6)ではアメリカの相続税について、

日本でいうところの基礎控除額が約25.3億円であることの説明などがあります。(日本は数千万円!)

(注4)ではドイツの相続税の説明について、とても難しい記述があります。

このように、主要先進国でも日本と比べると制度がずいぶん違います。

 

この他にも、下記のように、日本と異なる制度を持つ国々があります(執筆時現在)。

そのうえ、2010年代のアメリカに代表されるように、相続税が廃止されたり復活したりと、

日本同様、かなり改正が多いので、一筋縄ではいきません。

 

相続税が無い国…元々相続税が無い、廃止された

中国、カナダ、オーストラリア、スウェーデンetc…

被相続人が相続税を払う国…税金を払った残りを相続人が取得する

アメリカ、イギリス、韓国、台湾etc…

相続税とは違う形で課税される国…相続税ではないが所得税が貸されたりする

ベトナムetc…

 

ちなみに、法人税などの租税条約を日本は何十本と結んでいますが、相続税についてはアメリカとの一本しかありません。

 

 

何が普通と異なるのか? ‐考え方が根本から覆る‐

私たちは、 “日本の民法”“日本の相続税法”“日本の制度”等を自然と前提にして考えます

例えば、

・父が亡くなった場合、母が1/2、兄弟2人は1/4ずつ財産をもらえる。

・でも遺産分割協議次第で分割内容は変わる

・そもそも父は遺言書いているだろうか?

・父の財産は不動産が多いから、預金そのものより評価額は低くなるだろう

などと考えます。

 

これが、

「中国国籍から帰化して日本国籍を持ち、

日本の上場有価証券やハワイのコンドミニアムを持っている、

中国生まれ日本育ちの1年前からアメリカ在住の人」が亡くなって、

「日本の人が財産を取得(相続)する」場合

は何をどう考えればいいのでしょうか。

 

相続税の観点だけでも、

“各国で何か取り扱いがあるのか?”

“日本での相続税の計算や手続きは通常と異なるのか?”

などなど、多くの謎が生じます。

 

このように国際相続となると、単純に「ココとココが日本と違います」と簡単に説明が付かないほど、アレもコレも異なるのです。

 

まとめ

国際相続の場合、制度や法律が日本とは違い、その違いに関連した課題が多いです。

相続は一生のうちに何度も遭遇するものではありません。

そんな相続が国をまたぐとき、さらにどのような問題が起きうるのか、事前に知っておけばある程度対処できると思います。

 

次回以降は、次の3回に分けて具体的に何が課題になるのかを見ていきたいと思います。

 

第一回:相続人が日本以外の場合 その1

第二回:相続人が日本以外の場合 その2 & 被相続人が日本以外の場合

第三回:財産が日本以外の場合