国際税務Vol.26 海外取引に係る消費税の取扱い3 ~非課税取引と輸出等~
海外取引に係る消費税の取扱い3
~非課税取引と輸出等~
国際税務Vol.26
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今週は国際取引に係る消費税がテーマとなります。
前回(海外取引に係る消費税の取扱い2)は、
役務の提供取引の中にも、消費税がかからない輸出免税取引があることをご紹介しました。
今回も海外取引の際に注意すべき点を、事例を見ながら確認していきたいと思います。
事例
当社は、外国の子会社(非居住者)に対して、金銭を貸し付けております。
貸し付けに対して、毎年、受取利息が発生しておりますが、消費税の取り扱いはどうなりますでしょうか。
国内の会社に対する貸し付けと同じく、非課税売上でよろしいでしょうか?
回答
非課税資産の輸出等に該当しますので、非課税売上と同じく消費税はかかりません。
しかし、納付する消費税の計算上、非課税売上とは違った取扱いとなります。
非課税資産の輸出等 とは
非課税資産の輸出等とは国内で取引する場合に非課税とされるもの(非課税資産の譲渡等)のうち、
金銭の貸付けなどで債務者が非居者であるものです。
具体的には、非居住者に対する次のようなものがあります。
①貸付金の利子
②国債等の利子
③金融機関の預貯金の利子などの分配金
④合同運用信託
⑤手形の割引に対する割引料
今回の事例ですと、海外の子会社(非居住者)に対する貸付金の利子(①のケース)のため、
非課税資産の輸出等に該当し、消費税はかかりません。
非課税取引との違い
国内の居住者に対する貸付金の利子は、非課税取引に該当するため、消費税はかかりません。
非課税資産の輸出等も非課税取引も、消費税がかからず何も変わらないのだから、
わざわざ分ける必要は無い・・・と思いがちですが、
実は納付する消費税に違いが出るのです。
課税売上割合が大事
その他Vol.13 たま土地と消費税で説明致しましたが、消費税は下記のように計算致します。
<受取消費税>
-<課税売上に要する支払消費税>
-<課税&非課税売上に共通して要する支払消費税✖※課税売上割合>
=<納付消費税>
そのため、課税売上割合が大きいほど、納付する消費税は少なくなります。
非課税取引の場合
今回の事例が非課税取引に該当する場合を考えてみます。
下記の通り、非課税売上が増えますと、分母の金額が大きくなり、課税売上割合は小さくなります。そのため、納付する消費税は多くなってしまいます。
非課税資産の輸出等の場合
次に、非課税資産の輸出等に該当する場合を考えてみます。
非課税資産の輸出等売上は、下記の通り、分母と分子の金額を大きくします。
そのため、分母だけが大きくなる非課税売上と比べ、課税売上割合は大きくなり、納付する消費税は少なくなります。
消費税の区分に注意
消費税がかからない取引であっても、その区分の仕方により、納付する消費税に違いがでてしまいます。
今回ご紹介したもの以外でも、海外の支店に輸出した場合や国外で取引が行われた場合など、様々な取扱いがありますので、国際間の消費税の取引は注意が必要です。