国際税務Vol.24 国外居住親族に係る扶養控除等 ~親族関係書類と送金書類~
国外居住親族に係る扶養控除等
~親族関係書類と送金書類~
国際税務Vol.24
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の木下です。
年末調整や確定申告の際には、配偶者控除や扶養控除を受けられる方も多いかと思います。
その際、その扶養親族の方が留学などで、国外にいる場合は注意が必要です。
そもそも国外に居住する同居していない扶養親族について、扶養控除等が受けられるのか?
通常の扶養控除等と何が違うのか?一緒に確認していきましょう。
国外居住親族
1年以上の留学で国外にいる親族や外国人労働者の国外親族など、
非居住者である親族のことを国外居住親族といいます。
この国外居住親族について、配偶者控除や扶養控除、障害者控除を受ける場合には、
親族関係書類と送金関係書類を提出しなければなりません。
国外居住親族も対象
詳細は割愛しますが、扶養控除等は
生計を一にする一定の扶養親族などがいる場合に所得控除を受けることができる規定です。
この”生計を一にする”
とは、基本的に同居を前提とします。
しかし、別居している親族でも、生活費や学資金、療養費などを常に送金している場合には,
生計を一にするものとして取り扱われます。
この規定は、国内の親族(居住者)のみではなく、国外の親族(非居住者)も同じです。
そのため、国外居住親族についても扶養控除等の対象とすることができます。
国外居住親族の把握
税務署や給与等の支払者が国外居住親族を把握することは困難です。
国外の扶養親族が10人以上いて、高額の所得控除を受けるケースもありました。
そのため、
●国外の親族が存在することを証明する書類(親族関係書類)と
●生計を一にしていることを証明する書類(送金関係書類)を
提出(提示)する規定が設けられているのです。
親族関係書類とは
国外居住親族が居住者の親族であることを証するものとして、
下記どちらかの書類が必要となります。(外国語の場合、翻訳文も必要)
①戸籍の附票の写し(その他の国等が発行した書類)と(国外居住親族の)パスポートの写しの両方
②外国政府等が発行した書類で国外居住親族の氏名、生年月日、住所(又は居所)の
3つの記載があるもの(記載がない場合、複数の書類を組み合わせることが必要。)
①は、留学で国外居住親族となった場合が多いかと思います。
日本国内の書類のため、比較的簡単に入手できます。
②は、外国人労働者の扶養親族が国外にいる場合が多いかと思います。
例えば、戸籍謄本や出生証明書、婚姻証明書などがあります。
扶養親族によってはこれらの書類を組み合わせる必要があります。
例)配偶者の父母の場合
本人の婚姻証明書と配偶者の出生証明書の組み合わせ。
国内の書類に比べ、海外から書類を取り寄せる必要があり、入手までに相当手間がかかります。
送金関係書類とは
国外居住親族の生活費・教育費に充てるための支払を必要の都度、
各人に行ったことを明らかにする書類として、次のものが必要となります。
①外国送金依頼書の控えなど、
居住者から国外居住者に金融機関が行う為替取引により支払をしたことを明らかにするもの
②クレジットカードの利用明細書など、
国外居住親族の利用代金を居住者が支払ったことを明らかにする一定のもの(いわゆる家族カード)
送金額と送金頻度
国外居住者への送金額の基準は特に定められていません。
しかし、年間の送金額が少額ですと、
生活費などが必要の都度送金されていないと判断される可能性もあります。
また、送金頻度については、扶養控除等を受けようとする年に支払われている書類が必要となります。
提出時期
親族関係書類は給与所得者の扶養控除等申告書の提出の際に、
送金関係書類は年末調整の際に、給与等の支払者に提出(提示)する必要があります。
また、個人で確定申告を行う場合には、税務署に提出(提示)する必要があります。
(給与等の支払者に提出、提示した場合を除く)