相続・事業承継Vol.26 株式等売渡請求制度をご存知ですか-少数株主対策に-
株式等売渡請求制度をご存知ですか
相続・事業承継Vol.26
-少数株主対策に-
皆様こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の押味です。
会社を経営するうえで、あるいは事業承継の際にネックとなることの一つに、
少数株主がいること、株式が分散していることが挙げられます。
事業承継における後継者にとっては、自分以外に少しでも株主が存在していることは不安です。
今回はこれに関連して、株式等売渡請求制度をご紹介します。
株式等売渡請求制度とは
株式等売渡請求制度とは、“大株主が少数株主に対して株式を売り渡すように請求できる”制度です。
もう少し具体的に言えば、
“90%以上の議決権(株式)を持つ株主が、それ以外の株主に対してその株式を買い取ることを請求できる制度”です。
(つまり株主同士の売買となります)
事業承継においては、
冒頭に記載した通り後継者にとって、好ましくない少数株主がいた場合、
この制度を活用して少数株主を整理することができて、安心だといえるでしょう。
詳細や留意点
株主の権利
まず株主の権利を知っておきましょう。
当たり前ですが、株式は1株でも持っていれば配当がもらえます。
また、1%でも持っていれば「議題提案権」などの権利が生じ、
3%もあれば株主総会の召集、帳簿の閲覧もできるようになります。
これらはぱっと見「大したことないな」と思われるかもしれませんが、非協力的な少数株主の場合、
これだけでも非常に困ります。
例えば、
利益が貯まってきたので配当をしようかなと思っても、
受け取ってもらえないとか確定申告が必要になるので文句を言ってくるとか、
逆に帳簿を閲覧して利益が貯まっていることを見て配当や高額な価格での株式買い取りを請求したり、
役員報酬の減額を請求したり、毎回株主総会で迷惑な議題を提出してくるなどなど…、
何が起きるかわかりません。
また、単に仲が悪い株主がもっているだけでも大変ですが、その株式を第三者、
しかも会社法務に明るい人に売却されてしまったらどうでしょうか。
請求の方法
大株主は会社に対して「対価、株式数、日程」などを通知を行い、会社の承認を受けます。
会社は承認の後に少数株主に対して内容を通知したり公告したりした後、売買が行われます。
(ほかにも事前開示など細かい手続きはあります)
少数株主側の権利
・きちんとした手続きを踏んでいない場合→取得をやめることを請求できる
・買取価格に納得がいかない場合→裁判所に対して価格決定の申し立てができる
・法的な要件を満たしていないなどの場合→無効の訴えができる
これらが少数株主側にとっての救済措置です。
救済措置ではありますが、きちんと要件を確認し、手続きを踏めばこれらの措置は機能しないようにも思えます。
つまり、大株主からすれば、要件と手続きを間違わないように行えば、確実に株主の整理ができるということです。
こういった制度を知って、うまく活用して、健全で安心な経営、事業承継が行われるといいですね。