国際税務Vol.20 外国で超過課税された税金の取扱いが変わっています!~外国税額控除が改正~
外国で超過課税された税金の取扱いが変わっています!
~外国税額控除が改正~
国際税務Vol.20
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
企業が海外進出する際の形態は主に3つあります。
それは、駐在員事務所・支店・子会社です。
駐在員事務所は、主に調査活動をするためのものであるため、基本的には営業活動はできないでしょう。
いざ営業活動をするとなると、支店として進出することになります。
しかし、その国の現地法人でないと営業に必要な免許が取得できない場合など、
支店形態には様々な制約がある場合があります。
このような場合には、子会社として進出することになりますので、
支店より子会社の形態のほうが圧倒的に多いでしょう。
今回のテーマは、子会社として進出した場合に、現地で超過的に課税された際の取扱いです。
配当する場合の源泉税について
海外に子会社として進出した場合、
設立後の数年間は黒字化することは難しいかもしれません。
しかし、何年か頑張って黒字化し、日本の親会社に配当をすることになったとしましょう。
現地子会社が日本親会社に配当する場合、多くの国では、その現地国の税法により源泉税が課されます。
しかし、日本は多くの国と租税条約を締結しており、
配当や利子・使用料には軽減税率が適用されています。
例えば、現地国の税法による配当に係る税率が15%だったとしても、
日本と現地国との租税条約で10%に軽減されている場合があります。
しかし、アジア新興国の一部には、現地国の税法による税率が課税されたまま、
租税条約が考慮されないことがあります。
さらにひどい事例として、現地国の税法による税率を超えた税金が徴収されたということもあります。
現地の源泉税の日本側の取り扱い
この場合、日本の親会社の税務はどうなるのでしょうか。
実は、平成28年4月1日の前後で変わっています。
<平成28年3月31日以前に開始する事業年度の取扱い>
租税条約の限度税率(上記例では10%分)・・・外国税額控除
租税条約の限度税率を超える部分(上記例では5%分)・・・「仮払金」で資産計上
上記の通り、租税条約の限度税率を超える部分(上記例では5%分)は、一旦、「仮払金」で資産計上します。
その後、租税条約の適用により5%分が現地国から還付されたときに、
仮払金を取り崩す処理となっていました。
しかし、ここに大きな問題があります。
それは、現地国の税務当局が真摯に対応してくれるか?ということです。
租税条約を基に還付の手続きをしても、当局から返答がない場合や、
取り下げるように圧力をかけてくる事例もあるようです。
その場合、仮払金がどんどん溜まっていき、
いつになっても取り崩せないという事態が起きていました。
このような問題は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度からは解決するようになっています。
<平成28年4月1日以後に開始する事業年度の取扱い>
・租税条約の限度税率(上記例では10%分)・・・外国税額控除
・租税条約の限度税率を超える部分(上記例では5%分)・・・損金算入
租税条約の限度税率を超える部分(上記例では5%分)は損金算入されることにより、
「仮払金」が永久に残る問題は解消されるようになりました。
そして、現地国の還付手続きで実際に5%分が還付されたときに、
収益として計上すればいいことになりました。
(実際に還付される可能性はかなり低いと思いますが。)
それでは、今まで資産計上していた「仮払金」はどうすればいいのでしょうか?
この改正がありましたので、累積されていた「仮払金」を取り崩して損金算入することが認められます。
ただし、企業が足元の業績を見ながら恣意的に損金算入した場合は、
税務調査で否認される可能性があります。
還付の見込みが完全に無くなったなど合理的に説明できる資料を揃えておく必要があるでしょう。