国際税務Vol.19 シンガポールの不思議な税制~移住したらお得?~
シンガポールの不思議な税制
~移住したらお得?~
国際税務Vol.19
こんにちは。寒暖差の激しい昨今体調管理が難しいですね。
わずか東京23区ほどの面積しかない国、
シンガポールは著しい経済成長を遂げ治安も良好な先進国家です。
その税制はかなり独特で、日本人から見たら多々うらやましい面もあります。
さて今週はシンガポール税制がテーマのSUレターです。
最近は海外取引を行う日本企業が増え、それにまつわる税務についての検討を行う中で、他国と日本の税制の違いに驚くことがあります。
中でもシンガポール税制は日本にはないような感覚に基づいて形成されており、感嘆することもしばしば。
本日は、その一部をご紹介させていただこうと思います。
まずは法人税率
17%ととても低いです。
実際は様々な優遇税制を適用できる可能性があり、実行税率はもっと低くなります。
新設法人については、設立から3事業年度は部分免税となる制度があります。
個人の所得税率は
累進税率となっていますが、最高でも22%となります。
日本の住民税に該当するものはなく、これポッキリなので富裕層が移住したくなる気持もよくわかりますね。
次にキャピタルゲイン
ですが、原則非課税となります。
ただし、取引頻度、保有期間、売却の背景等によりビジネスとしてトレーディングを行っていると判定された場合には課税対象となります。
欠損金の繰越は
日本においては9年ですが、シンガポールにおいては無制限に繰り越すことができます。
ただし、株主構成が著しく変動し、それが租税回避目的であるとみなされる場合には失効してしまうので、「株主テスト」を行い判定が必要となります。
日本人にとって一番不思議に感じられる制度は研究開発等に関する優遇税制、
いわゆるPIC(Productivity and Innovation Credit)スキームではないでしょうか。
この制度の下では、研究開発、知的財産権登録、知財権の取得、設計、自動化装置・ソフトウエア、
社員の能力向上研修費に対する支出額の400%の損金算入または40%の補助金交付が認められています。
400%?つまり支出額の4倍、実際にキャッシュアウトしている金額以上の損金算入が認められるのです。
1万S$支出したら4万S$を経費とできるのです。
支出額40%の補助金を受けられるということも斬新です。
よく「今新製品を買ったら○○円キャッシュバックキャンペーン」などを見かけますが、税務当局からキャッシュバックを受けられるなんて!
日本ではまず考えられない制度なのでひたすら感心していたのですが、残念ながらこの制度は2018年度以降に終了してしまうようです。
他国の税制はその国ならではの特徴も多いので、今後も興味深く見ていきたいと思っています!