相続・事業承継Vol.1 相続税だけでなく所得税も?~出国税(相続人に非居住者がいる場合は要注意!)~
相続税だけでなく所得税も?
相続・事業承継Vol.1
~出国税(相続人に非居住者がいる場合は要注意!)~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。
なんと最近弊社に米国の大学を卒業した人が入社しました!
もちろん英語はペラペラです。うらやましい限りです。語学に技術を身に付ければ仕事の幅が広がりますね
さて今週は国際相続がテーマのSUレターです。
ご存知の方も多いと思いますが、昨年(平成27年)の7月に国外転出時課税という制度が出来ました。いわゆる出国税といわれるものです。
出国税とは
どのような人が対象になるのかというと、国外転出時に有価証券等(匿名組合契約の出資持分も含まれます)を1億円以上保有し、かつ、国外転出をする日前10年以内に日本に居住していた期間が5年超である人です(以下「対象者」といいます)。
対象者が日本から転出される際に、保有している有価証券の未実現利益に所得税を課税するという制度です。
日本はひどい制度を作る国だと思うかもしれませんが、実は多くの先進国(米国、仏国、英国など)が既に導入しています。
相続税・贈与税に関連する?
出国税という名称から日本から国外へ移住する方の所得税のみが対象との印象を受けますが、この制度は相続や贈与の時にも関わってきます。
対象者が亡くなった時に、相続人の中に既に海外に居住している非居住者がいた場合などです。
有価証券等を非居住者が相続することになれば、その後非居住者が売却した際の売却益に日本の所得税を課税できなくなるため国外転出時課税の対象とされているのです。
このようなケースは結構あり得るのではないでしょうか。
例えば、
被相続人の方が非上場の会社の経営者でかなり成功し、株価は1億円を超えていた。しかし事業承継を行う前に突然お亡くなりになった。
その時息子はアメリカで働いていた、なんてことや会社を上場させ含み益が多額にあり、
いつか相続対策をしようと考えていたが、そのままお亡くなりになってしまった。
その相続人のうち1人が海外にいる、なんてこともありえます。
問題点は?
もめずに日本の居住者が取得すれば問題はないですが、もめるのが普通です。
遺産分割協議は相続税の申告期限までに、というのが今までの一般的な認識でした。
しかし、亡くなった方が出国税の対象者であり、かつ、相続人に非居住者がいる場合には、相続税の申告よりも前、被相続人の準確定申告までに遺産分割の意思決定をせざるを得ないケースが出てくることになりそうです。
相続発生後4か月以内に被相続人の準確定申告を行わなければなりません。
そこまでに分割協議が行われていなければ、有価証券等は共有財産であるため法定相続分で有価証券等を取得したとみなして、非居住者についてはその有価証券の相続分が出国税の対象となり譲渡所得税を納付しなければなりません。
もちろん被相続人の資金は凍結されています。自己資金から納付するか納税猶予(担保を提供する必要あり)手続きをするか迫られます。
その後分割協議で非居住者の取得分が増えれば、確定した時点から4か月以内に修正申告を行い、減れば更正の請求ができるようになりました(平成28年度改正)。
遺族の気持ちも無視して、4か月以内に意思決定をせまるのはあまりにもひどく、せめて相続税と同じ10か月の猶予を与えるべきではないでしょうか?