国際税務Vol.7 海外出向者に支払う留守宅手当の税務 ~日本の扶養家族に支払う留守宅手当の取扱い~
海外出向者に支払う留守宅手当の税務
国際税務Vol.7
~日本の扶養家族に支払う留守宅手当の取扱い~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
さて、今週は国際税務がテーマになります。
あるお客様から、下記のような質問がありました。
「海外の子会社に従業員を5年ほど派遣する予定だが、
会社の規定で留守宅手当を支払うことになっている。この留守宅手当とは何ですか?
また、留守宅手当を支給した場合の税務を教えてください。」
さて、留守宅手当とは何でしょうか。また、税務の取扱いはどうなるのでしょうか。
留守宅手当とは、
留守宅手当は、「海外単身赴任手当」や「海外別居手当」、「残留家族特別加算」などの様々な名目で支払われることがあり、「国内社会保険料相当分」や「国内残留家族生活費相当分」のいずれか、又は両方の意味合いで支払われます。
なぜ留守宅手当を支払うのか
では、留守宅手当が、どのような考えに基づいて設定され、
支給されているのか又それらの支給に関する留意点などを述べたいと思います。
国内社会保険料相当部分として支給される手当は、在籍出向させる場合、海外勤務中でも日本の社会保険料が発生するため、この社会保険料に相当する金額の補てんとして、会社が留守宅手当の中に含め為替変動によるリスクを回避できるよう配慮して円貨建てで支給し、会社はそこから個人負担分保険料を天引きすることになります。
国内残留家族対応分として支給される手当は、一部又は全ての家族が日本国内に残留した場合に支給される手当です。
こちらも為替変動によるリスクを回避するため円貨建てで支払われます。この手当は別居を余儀なくされることによる住居費、通信費、留守宅維持費用など日本で生ずる費用に対応する金額となります。
税務の取扱いは
留守宅手当の税務での取扱いですが、まず、この従業員が税法上、居住者に該当するのか、非居住者に該当するのか判定する必要があります。
税法上、居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する者とされています。
また、非居住者とは、居住者以外の者とされています。
海外赴任の場合、海外赴任期間が1年以上の予定の者は、出国時に非居住者とされます。今回海外派遣する従業員は、5年間の予定で海外赴任しますので、出国時から非居住者に該当します。
非居住者は国内源泉所得のみが課税され、国外源泉所得は課税されないこととなっています。
今回支給する留守宅手当は、この従業員が海外で勤務をすることに基因して日本の家族に支給されます。
つまり、国外勤務を基因として行われるので、税法上は国外源泉所得となります。
したがって、この留守宅手当は、非居住者が受ける国外源泉所得となりますので、日本での課税はありません。
海外で課税される可能性!?
日本で課税されないということで喜んではいけません。
海外勤務地の国で課税される可能性があります。
海外の国では、日本と同様に居住者には全世界所得を課税するという国が多いです。
今回の従業員は、日本では非居住者ですが、海外勤務地国では居住者になります。
そのため、海外勤務地国では全世界所得に課税される可能性があります。
この全世界所得には留守宅手当も例外ではないでしょう。
そのため、海外勤務地国での税法を調べ、納税が必要な場合は、必ず納税しましょう。
ここで、日本法人が直接日本の口座に支払っているのに、海外の税務当局は分かるの?と疑問を持たれる方もいると思います。
海外税務当局は、お金の動きは分かりませんが、留守宅手当制度の存在は把握していて、日本側で留守宅手当の支給がないか執拗に調べることもあります。
そのため、正しく納税しておいたほうが無難でしょう。