国際税務Vol.10 国際的租税網CRSで丸裸! ~公平な社会?監視社会?~
国際的租税網CRSで丸裸!
国際税務Vol.10
~公平な社会?監視社会?~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
皆さん、CRSという用語をご存知でしょうか。CIAではございません。
税理士以外の方で知っている方は、ドキッとしている方もいるようです。
CRSは、Common Reporting Standardの略で、日本語では、「共通報告基準」と言います。
経済協力開発機構(OECD)では、経済活動全般を意見交換していますが、
その中に税の分野もあります。
今、世界では国家をまたがる脱税・租税回避が問題となっており、
OECDを中心に世界的に統一ルールを策定しようと動いています。
その中で、一つの成果として出たのが、CRS(共通報告基準)になります。
CRSとは・・・
前置きが長くなってしまいましたね。次に中身を見てみましょう。
国税庁HPには、
「各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する
金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、
その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供します。」
と記載があります。
例えば、日本居住者Aさんが、シンガポールに銀行口座を持っていたとしましょう。
その場合、シンガポールの銀行はAさんの名前・住所・納税者番号・
口座残高・利子や配当などの年間受取金額を、シンガポールの税務署に報告します。
そして、シンガポールの税務署は、その報告を受けた内容を、日本の税務当局に自動的に報告します。
この一連の流れが、CRSによる金融口座情報の自動的交換という制度になります。
CRS導入でどうなる?
CRS導入により、日本の税務当局は、日本居住者が海外に持つ銀行口座や証券口座を自動的に入手することができます。
その情報を、提出済みの確定申告書と照合し、海外の利子や配当の記載が無ければ、
すぐに税務調査という流れになるでしょう。
税務当局にとっては、増差バブル!
納税者にとっては、納税地獄!
となるかもしれませんね。
ITが発達し、経済的に国境の壁が低くなってきたことで、
国際的脱税や租税回避が簡単に複雑に行われて来ました。
しかし、ついに、国同士が連携して、そのITを使って、
全世界の情報を集めようとしています。
国境なき世界連邦への一歩になるのか、グローバルな監視社会になるのか、
人類はどの方向へ向かっているのでしょう。
世界のリーダーあの国は入っていない!
CRSは、2017年6月時点で100か国・地域が導入を予定しています。
その中には、イギリス、イタリア、インド、ドイツ、フランス、オーストラリア、
中国など、大国が名を連ねています。
もちろん、ケイマン、BVI、パナマ、シンガポール、香港など
の有名なタックスヘイブン地域も含まれています。
タックスヘイブン地域が入っていなければ、何も有効に機能しませんからね。
ただ、世界のリーダーと言われる、アメリカが入っていません。
何故でしょうか。アメリカの見解としては、既に国内の法律で同様の制度があるため、
必要ないとしています。
その制度は、FATCA(通称ファトカ)と呼ばれ、
アメリカ人及び永住権保持者が国外に銀行口座がある場合、
その銀行は、毎年アメリカに報告しなければならないという制度です。
つまり、アメリカの徴税のための制度です。
☆ CRSは、お互いの国のための徴税システム。
☆ FATCAは、アメリカだけの徴税システム。
なぜ、FATCAを導入しているからCRSは必要ない、というのか理屈が分かりません。
さすが、アメリカ第一主義ですね!
ちなみに、トランプさんが決めたと思いきや、オバマさんの時代に決めていました。
アメリカ第一主義は、アメリカのアイデンティティなのでしょうか。。
これ以上書くと、アメリカに入国できなくなる?ので筆を置きたいと思います。