相続・事業承継Vol.11 株式の機能② ~全部取得条項付株式を活用~
株式の機能②
相続・事業承継Vol.11~全部取得条項付株式を活用~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の押味です。
相続税で争点となるのは、財産の分割や納税資金といわれており、
実際その通りだと実感します。
そして、相続税の対象となる方の中には、
事業を行っている方(株式をお持ちの方)も多いのですが、
この株式もこの争点に影響を与えています。
今週は、この株式の承継について、
その中でも種類株式(全部取得条項付株式)について、
その活用の仕方を見ていきます。
事業承継、株式承継に活用するとは
全部取得条項付株式を事業承継に活用するというのは、
“株主を整理する”ということだといえます。
特に業歴が長い会社ですと、取引先や創業時の仲間(やその親族)、
兄弟姉妹など株主が多く存在することも多々あります。
このように、これといった必要性が無いのに株主が多く存在していると、
そのうち収集がつかなくなってしまいます。
また、相続の場面以外にも、会社が重要な決断をするときに反対株主が存在する可能性もあります。
これでは中小企業の強みであるスピーディーな動きも取れません。
全部取得条項付き株式とは?導入法は?
まずはざっくりと内容を見てみましょう。
・全部取得条項付き株式とは、
「株主総会の特別決議により、その種類株式を会社が全部取得することができる株式」
…つまり、株主総会で「買おう!」となれば会社が買い取ることができる!
・なお、特別決議とは、
「議決権を持った株主のうち過半数の出席があり、出席したうちの2/3以上の多数による決議」です。
…つまり、少なくとも2/3以上が味方であれば導入も買取も可能!
・そして、その導入法は(現在は普通株式のみの会社だと仮定して)、
①種類株式を発行できる会社に定款を変更(やはり株主総会特別決議で)
②既発行の普通株式全部に全部取得条項を付ける
→これで完了!
活用法は?
上記の通りに全部取得条項付株式を導入した後で、
①全株買取の決議をする
②買取の対価として新株を交付するが、排除したい少数株主には交換比率を調整して、端株=株式ではなく金銭を交付するようにする
これで少数株主を排除することになります。
※少数株主を保護するための措置もちゃんとあります。
いかがでしょうか?わかりにくいので、例を考えましょう。
簡単な例
株主構成をAさん15株&Bさん15株 vs Cさん10株と仮定します。
特別決議では、Aさん15株&Bさん15株の併せて30株/40株(2/3以上)となり、
導入や買取まで行えますね。
また、「旧株式15株につき新株式1株交付します」とすると、
Cさんには株式を交付できませんので、代わりにお金を渡すこととなります。
イメージつきましたでしょうか?
最後に
相続税で争点となる“財産の分割”と“納税資金”に影響を与える大きなものには2つあると思います。
不動産と株式(非上場株式)です。
「分割のしやすさ」「換金のしやすさ」から考えるとよくわかります。
会社は株主のものですから、特に非上場の株式については、
その所有者である株主が多く存在することになることは望ましくない場面が少なくありません。
株主が多い
=利害関係者が多い
=利害関係が対立してしまうことも多い、
ということです。
また、お亡くなりになる方が生涯をかけて育ててきた会社というのは、
その事業自体もさることながら、家族の歴史、創業の想い、
従業員、従業員の家族など、
財務諸表やある一つの視点からでは見えない大切なモノが多くあり、
株式が分散し、会社運営に支障をきたすようなことになるのは望ましくないといえます。
「自分の子供たちは仲がいいから何があっても大丈夫」と思う方も多いでしょうが、
「親族」という範囲で見ると、血のつながりのない“子供の配偶者”がいることを忘れてはなりません。
かなしいかな、ご自分がいなくなった後は、
ご自分の思っているようなことにならないことも多いです。