その他Vol.13 たま土地と消費税 ~決算までに承認を~
たま土地と消費税
その他Vol.13
~決算までに承認を~
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今週は消費税がテーマのSUレターです。
会社の移転によって敷地を売却するなど、たまたま土地を譲渡した際、
消費税に気をつける必要があります。
ご存知の通り、土地の譲渡について、消費税はかかりません・・・が
実は、負担する消費税が増える可能性があるのです。
そういった「たま土地」ですが、
届出書の提出により、消費税の負担が少なくなるかもしれません。
簡単に消費税の仕組みをおさらい
受取った消費税から支払った消費税を差し引いたものが、納付する消費税となります。
ただし、課税売上割合が95%未満ですと、原則として、次のように計算します。
<受取消費税>
-<課税売上に要する支払消費税>
-<課税&非課税売上に共通して要する支払消費税✖課税売上割合>
=<納付消費税>
課税売上割合とは?
課税売上割合とは、簡単に説明しますと、
<課税売上>が<総売上(※)>に占める割合
のことです。
(※)総売上=課税売上+非課税売上
課税売上割合が高いと、上記算式より、納付する消費税が少なくなり、
課税売上割合が低いと、納付する消費税が多くなります。
土地の譲渡で納税が増える!?
ここからが本題です。
土地の譲渡については、非課税売上に該当します。
すると、上記の<総売上>のみが増えるので、課税売上割合が大きく下がる恐れがあります。
課税売上割合が下がると、
受取消費税から差し引くことができる支払消費税が下がりますので、
納付する消費税が増えてしまうのです。
高額資産の取得でさらに増える!?
さらに、過去3年以内に100万円以上の建物などを取得している場合にも影響があります。
詳細は割愛しますが、
このような資産を取得してから3年間の課税売上割合が著しく減少した場合、
支払消費税が減額調整される規定があります。
つまり、土地の譲渡により課税売上割合が著しく下がると、
納付する消費税がさらに増える恐れもあるのです。
たま土地による負担を回避
”移転のためたまたま土地の譲渡を行ったのに、消費税の負担が増えてしまう。”
そういった、”たま土地”により一時的に消費税の負担が増えないよう、
次のような規定があります。
「準ずる割合による計算」
「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を税務署に提出し、
承認を受ける事によって、
課税売上割合の代わりに課税売上割合に準ずる割合を使用することができます。
課税売上割合に準ずる割合は次のいずれか低い割合です。
・過去3年間の通算課税売上割合
(=過去3年間の課税売上高の合計/過去3年間の総売上高の合計)
・前期の課税売上割合
どちらも土地の譲渡に関係ない期間の課税売上割合となるので、
土地の譲渡による影響を受けずに消費税を計算することができます。
承認を受けるための要件
”たま土地によって今期だけ課税売上割合が下がったこと”
を税務署から認められる必要があります。そのため、
・土地の譲渡が単発であること、
・譲渡がなかった場合に事業の実態に変動がないこと(※)
が要件となります。
(※)事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、
過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内
である場合
細心の注意を
この規定は、
適用を受けようとする事業年度中に税務署からの承認を受ける必要があり、
この承認には約1か月~2か月かかります。
そのため、決算間際の譲渡を予定している場合、注意が必要です。
また、翌期において
「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」
を提出する必要があるので、ご注意下さい。