国際税務Vol.14 不動産の売主が非居住者だったら?
不動産の売主が非居住者だったら?
~源泉徴収義務!?~
国際税務Vol.14
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。
オリンピックが近づいてきて、不動産価格も上昇しているみたいですね。
平成29年の路線価では銀座の土地がバブル時代の価額を超えたようです。
そのような中で、現在は、外国人の方が日本の不動産を購入する動きも活発です。
また、オリンピックが近いため、逆に不動産価額は上がらないと見ている外国人の方は、
不動産を売却して利益を確定する動きも出てきているようです。
日本居住者が、不動産を購入した場合、
日本居住者同士の売買であれば税務上の問題はそこまでありませんが、
売主が非居住者だった場合は、税務上の注意が必要になります。
それは、買主に源泉徴収義務があるということです。源泉徴収税率は10.21%です。
この点、以前のSUレターVol.13でも紹介させていただきましたが、
詳しい内容を教えてほしいとの声がありましたので、
今回は詳細に説明させていただきます。
例えば、
居住者Aさんが、非居住者Bさんから日本の不動産を1億円で購入したとします。
その場合、Aさんは、非居住者Bさんに源泉所得税1021万円を差し引いて、
税務署に納付しなければなりません。
Aさんが非居住者Bさんに支払う売買代金は、
1021万円を差し引いた8979万円になります。
そうです。1億円をBさんに支払ってはいけないのです。
なぜ、このような制度になっているのでしょうか。
もともと、非居住者が、日本の不動産を売却して利益を得た場合、
売却益に対して申告の上、税金を納付する義務があります。
その税金は、非居住者が個人の場合は所得税、法人の場合は法人税です。
しかし、非居住者が日本で申告納付せずに、
海外へ売り逃げしてしまう事例が頻発したため、
平成2年に源泉徴収制度を導入しました。
これにより、源泉徴収義務は買主である居住者になるため、
非居住者が売り逃げしてしまっても、
税務署は日本の居住者から税金を徴収すればいいというわけです。
そこで疑問ですが、
相手が非居住者か分からない場合もあり得ます。
その場合でも源泉徴収義務が居住者にあります。
それは、裁判例もあります。
平成23年3月4日東京地裁では、相手が非居住者か分からなかった事例が争われました。
この事例では、相手が非居住者かはよく確認すれば容易に分かるはずだ、
という判決が下されました。相手が非居住者か否かは、
例えば、
・売買契約書
・不動産登記事項証明書
・印鑑登録証明書等
・本人への直接確認
により、「容易」に分かるというものです。
「容易」には分からないこともたくさんあると思いますが、
確認義務を買主に転嫁して税金の徴収漏れだけは防ごうという恐ろしい制度だと思いました。
皆さんも不動産の買主の素性には気を付けてくださいね。