その他Vol.15 減価償却費と特例2 ~高額資産の取り扱い~
減価償却費と特例2
~高額資産の取り扱い~
その他Vol.15
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今週も、減価償却がテーマのSUレターです。
前回の減価償却費と特例では、少額資産の特別な償却方法をご紹介致しました。
今回は、高額資産についての様々な特別償却と税額控除について、
対象設備や要件を簡単にご紹介していきたいと思います。
特別償却と税額控除
まずは、特別償却(即時償却)と税額控除の違いについて、
1000万円の建物を取得して、30%の特別償却と7%の税額控除を選択できる場合を例に見ていきましょう。
特別償却では、
取得した1年目に通常の減価償却費の他、
1000万円×30%=300万円の減価償却費を計上することができます。
そのため税率を34%とすると、300万円×34%=102万円税金が安くなります。
これに対して、税額控除では、取得した1年目に通常の減価償却費の他、
1000万円×7%=70万円税金を安くすることができます。
選択適用の有利不利
上記の例ですと、特別償却の方が1年目の税金が安くなり、
有利に見えますが、そうとは限りません。
特別償却はあくまで、将来の減価償却費を先取りしているだけです。
そのため、当期に減価償却費(費用)を多く計上している分、
将来の減価償却費(費用)は少なくなる→将来の税金が多くなることになります。
これを課税の繰延べといいます。
これに対して、税額控除では、本来計上できる減価償却費とは別枠で、
税額を控除することができます。
そのため、将来の税金も含めて考えると、
基本的に特別償却より税額控除の方が有利になります。
以上を踏まえて、様々な特例を見ていきたいと思います。
中小企業経営強化税制
青色申告の中小企業者等が一定の要件を満たし、経営強化のために設備を取得し、
指定事業の用に供した場合、
取得価額を即時償却or取得価額の※10%税額控除を受けることができます。
※資本金3,000万円以下の場合。3,000万円を超えると7%税額控除。
○対象設備や要件は、生産性向上設備(A類型)と収益力強化設備(B類型)で異なります。
生産性向上設備(A類型)
○対象設備は、
・機械装置で1台160万円以上
・測定工具及び検査工具で1台30万円以上
・器具備品(一定の電子計算機・医療機器を除く)で1台30万円以上
・建物付属設備(医療保険業の一定のものを除く)で一つ60万円以上
・ソフトウェア(情報収集機能、分析・指示機能を有するもの。
ただし、一定のものを除く)で一つ70万円以上
○要件としては、
・一定期間内のモデルであり、生産性が旧モデル比年平均1%向上する設備である
証明書を工業会等から取得すること
・証明を受けた設備による経営力向上計画を主務大臣に申請し、
認定を受ける必要があります。
収益力強化設備(B類型)
○対象設備は、
・機械装置で1台160万円以上
・工具で1台30万円以上
・器具備品(A類型と同じ)で1台30万円以上
・建物付属設備(A類型と同じ)で一つ60万円以上
・ソフトウェア(一定のものを除く)で一つ70万円以上
○要件としては、
・年平均の投資利益率が5%以上と見込まれる設備であることについて、
経済産業局から確認書を取得すること。
・その設備による経営力向上計画を主務大臣に申請し、認定を受ける必要があります。
パンフレット
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170407zeiseikinyu.pdf/a>
商業・サービス業活性化税制
青色申告の中小企業者等が一定の要件を満たし、経営改善設備を取得し、
指定事業の用に供した場合、
取得価額の30%特別償却or取得価額の※7%税額控除を受けることができます。
※資本金3000万円以下の場合。3000万円を超えると税額控除はできない。
○対象設備は、
・器具備品(ショーケース、看板、レジスターなど)1台30万円以上のもの。
・建物付属設備(空調施設、昇降機設備、電気設備、店舗内装など)
1台60万円以上のものとなります。
○要件としては、経営改善指導等を行う機関から経営改善指導等を受けた旨
を明らかにする書類の交付を受けて、その書類に基づき、
上記の対象設備を取得する必要があります。
なお、経営改善指導等を行う機関は商工会議所や認定経営革新等支援機関などが該当します。
パンフレット
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2015/150401zeisei1.pdf/a>
中小企業投資促進税制
青色申告の中小企業者等が一定の設備を取得して、指定事業の用に供した場合、
取得価額の30%特別償却or取得価額の※7%税額控除を受けることができます。
○対象設備は、
・機械装置で1台160万円以上のもの。
・測定工具及び検査工具で1台120万円以上のもの
(1台30万円以上で複数の合計が120万円以上でも可能)
・ソフトウェア(一定のものを除く。)で一つ70万円以上のもの(複数の合計が70万円以上でも可能。)
・貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)や内航船舶(取得価格の75%が対象)
特に計画の認定を受ける必要はないので、他の規定に比べると、かなり適用を受けやすくなっております。
パンフレット
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2014/140401uwanose.pdf/a>
規定のまとめ
規定によって、対象となる設備は異なりますので、下記図を参考頂ければ幸いです。
その他の規定
今回ご紹介した規定以外にも、
地域固有の強みを活かした設備投資に対する地域未来投資促進税制や
エネルギー環境負荷低減を推進する設備投資に対する環境関連投資促進税制など、
様々ありますので、高額資産の取得を検討されておりましたら、
特例の適用ができないか考えてみてはいかがでしょうか。