相続・事業承継Vol.17 小規模宅地の特例の選択承認
小規模宅地の特例の選択承認
相続・事業承継Vol.17
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。
半年ほど前、ある弁護士さんから相談がありました。
「相続人Aと相続人Bがいます。小規模宅地の適用対象地は1つです。
遺言には、相続人Aがこの土地をもらうことが記載されています。
しかし、相続人Bは遺言に納得がいかず、遺言無効の訴訟を起こそうとしています。
申告期限まで2か月なのですが、
小規模宅地の特例の適用をすることは可能でしょうか?」
さあ皆さんはどう思いますか?
①遺言によって対象地はAさんが相続することになるのだから、適用できる。
②遺言が有効か無効かわからない=誰が対象地を相続するかもわからず、
未分割状態になるため、小規模宅地の適用はできない。
③判決が出たわけでもないのだから、遺言による財産取得をしたと考えて、Aさんが小規模宅地の特例の適用を受けることができる。あとで判決がでれば修正申告もありえる。
裁決を読んでみましょう
一つ裁決事例があります。参考に読んでみましょう。
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(以下、裁決事例抜粋)
被相続人は遺言を残していました。遺言には、
甲土地を相続人Xに相続させる旨の記載がありましたが、
乙土地については記載がありませんでした。
遺言を不服とした相続人Yは、遺言の無効確認訴訟を提起しました。
相続人Xは、他の相続人から小規模宅地の特例適用の同意は難しいとして、
相続人全員の同意書を添付せずに、
甲土地に小規模宅地の特例を適用して相続税の期限内申告を行いました。
しかし税務署は、他の相続人の同意がないため、
小規模宅地の特例の適用を否認しました。
そこで、相続人Xは国税不服審判所に審査請求をおこないました。
国税不服審判所は、
”租税特別措置法である小規模宅地の特例は、
どの宅地に適用するかにより他の相続人の相続税にも影響を及ぼすものであるため、
各相続人間で利益、不利益が発生するものであるから、
その解釈は厳しく確認されるべきであり、
特例の対象となる土地を取得する相続人の全員から同意書を得られていないため、
甲土地については小規模宅地の特例の適用はできない”
と判断しました。
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判決でも
また東京地方裁判所の平成28年7月22日判決においても、
”未分割の特例対象土地がある場合に、
遺言にある特例対象土地のみを、選択同意を得ずに小規模宅地の特例を適用することは、
他の相続人が現状未分割となっている財産を取得した場合には、
小規模宅地の特例を適用できる可能性があり、
その際に選択の同意を行うことが想定されるため認められない”
としています。
今回のケースへのあてはめ
では今回のご相談のケースではどうなるのでしょうか。
今回の場合、遺言に記載のある土地しか小規模宅地等の特例の適用対象地がないことから、
原則的には選択の同意を行う必要はないと考えられるため、
相続人Aが小規模宅地の特例を適用して相続税の申告書を提出すべきだと考えます。
小規模宅地は本当に難しいものですね。