相続・事業承継Vol.64
相続空き家の3000万円控除
相続・事業承継Vol.64
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の三橋です。
老親が地方に住んでいて、子供達は都市部で働き家も購入済み。老親が亡くなって相続しても誰も住まず空き家に…というケースは多いのではないでしょうか?総務省の資料によると、2023年に空き家は900万戸と過去最多となり、2018年からの10年で80万戸も増加しています。空き家は放置すると倒壊の恐れや防犯の面からも問題があります。空き家の発生を抑制・有効活用の観点から、相続により取得した空き家を譲渡した場合に、一定の要件のもとに所得税の優遇措置が設けられています。
平成28年4月1日以後の相続から始まった制度ですが、令和5年の税制改正で適用期限が令和9年12月31日までの相続に延長されるとともに、要件が一部変わりました。
【令和5年12月31日までの要件】
・昭和56年5月31日以前に建築されたこと
旧耐震基準により建てられた建物が対象です。
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
マンションなどは対象になりません。
・相続開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
老親が一人で住んでいて、相続により空き家に…を想定しているので、賃貸していた場合、親族と同居していた場合は対象外です。
ただし要介護認定を受け老人ホームに入居していた場合でも、老人ホーム入居前まで一人で住んでいた等の要件を満たせば該当します。
・相続開始から売却又は建物の取壊しまで空き家であったこと
親族が住んでいた場合、貸付けていた場合はダメです。
・被相続人が住んでいた土地建物を売主が耐震リフォームをしたうえで譲渡したこと、又は被相続人が住んでいた建物を取り壊して、更地にして土地等を譲渡したこと。
・相続開始日から3年がたった日の属する年の12月31までに売却すること
・売却価額が1億円以下であること。
・売却先は第三者であること。
【優遇措置】
譲渡所得の金額から3000万円を控除することができます。共有で相続した場合は、それぞれが控除を受けることができます。例えば子供二人が1/2ずつ相続し、売却価額が5000万円だった場合、譲渡所得は0になります。
【令和6年1月1日以後】
・耐震改修、取壊し時期の緩和
従来は売主が耐震工事又は更地にしてから譲渡することとなっていましたが、
・譲渡後、翌年2月15日までに買主側が耐震リフォームをした場合
・譲渡後、翌年2月15日までに買主側が取壊・滅失した場合
も摘要を受けられることになりました。ただし買主側の協力が必要になりますので、売買契約の中で特約を交わす等必要になります。
・相続人が3人以上いる場合は控除額は1人あたり2000万円になりました。
改正前は1人3000万円でしたが、改正により3人以上の場合1人2000万円に引き下げられました。
なお相続により取得した土地を売却した場合に相続税額のうち一定額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例(相続税の取得費加算)とは選択適用となりますので、いずれか有利な方の制度を選択することになります。