ブログBlog

相続・事業承継Vol.58 資産管理会社の活用(事例編)~個人から法人へ~

資産管理会社の活用(事例編)~個人から法人へ~

相続・事業承継Vol.58

こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の宮崎です。

資産管理会社の活用という内容で基本編・応用編を紹介してきましたが、今回は、資産管理会社をどう活用するか簡単な事例を紹介します。

<事例1>

Q.私は更地を所有していますが、土地の有効活用のために賃貸用アパートを建設しようと考えています。アパートを建設するにあたり、誰の名義で建築すればいいですか?

(条件)

推定被相続人:65歳男性 健康状態は良好
家族構成  :息子・息子の妻
所有財産  :更地 1億円 その他資産3億円
建設資金  :1億円 銀行借入により調達する 

A.相続は近い将来ではないと考えられるため、不動産管理会社で建物を建築し、所得の分散と相続税の節税を図りましょう

(解説)

検討① 名義別のメリット・デメリット

<推定被相続人(父)が建設する場合>

メリット

・建物について建設資金と相続税評価額の差により評価減が期待できる

賃貸建物の相続税評価額は下記の算式で計算されます。
建物の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0
貸家の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0×(1-借家権割合30%×賃貸割合)

なお、アパート等の固定資産税評価額は通常建築価格の60%前後といわれています。

この事例で、1億円で賃貸用アパートを建設した場合の相続税評価額を算出してみます。

(前提条件)

・1億円で賃貸用アパートを建設
・固定資産税評価額6,000万円
・建設後賃貸し、満室

(計算式)
6,000万円×1.0×(1-30%×100%)=4,200万円(相続税評価額)

相続税の計算上は、1億円(現金)が4,200万円(不動産)の評価に変わります。そのため、一般的には、建築価格(時価)の30~50%程度が相続税評価額となるといわれています。

・土地について貸家建付地で評価できる

相続税評価上は、自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合)で計算しますので、相続税の評価減が可能となります。

デメリット

・不動産所得は推定被相続人(父)に貯蓄されるため、将来の相続財産が蓄積され、相続税の負担が増大する。

<不動産管理会社が建設する場合>

メリット

・不動産収入が会社に帰属するため、所得移転が有効になる

不動産所得は推定被相続人(父)に蓄積されないため、将来の相続財産が増加せず、相続税の負担が抑制される。

デメリット

・無償返還方式等を採用した場合、土地は、貸付地(自用地×80%)となり、貸家建付地と比較して相続税評価額が高くなるケースがある


検討② 相続の開始がいつと想定されるか?

 相続がいつ発生するか、これは誰も予測することはできません。そうはいっても所得税対策や相続税対策はした方がいいですから、推定被相続人(父)の年齢により一定の方向性を決定します。

推定被相続人が95歳の方と、65歳の方では、対策の方向性は異なるでしょう。
ちなみに、「簡易生命表(厚生労働省)」では、65歳男性の平均余命は、約19年とされています。

(結論)

一旦の結論としては、下記の方向性を第一に検討します。
 推定被相続人が高齢の場合:推定被相続人が建設
 推定被相続人が若い場合 :不動産管理会社が建設

ただし、年齢だけでなく、健康面・家族状況・資産状況等により方向性が異なりますので、詳細なシミュレーションが必要になるでしょう。