国際税務Vol.57 タックスヘイブン対策税制③~個人株主も対象となります~
タックスヘイブン対策税制③~個人株主も対象となります~
国際税務Vol.57
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今回は外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の第3回目として、個人株主の取り扱いを確認していきたいと思います。
タックスヘイブン対策税制は、税負担の著しく低い国にある外国法人を利用した租税回避を規制するために、その外国法人の所得を日本の株主等の所得とみなして課税する制度です。
日本の法人が外国の子会社等を利用する法人株主等のパターンが多いですが、
個人の所得税においても、同様の規定があります。対象となる外国法人の範囲や合算対象金額など、概ね法人株主等と同じですが、個人株主等では適用できないものもあります。
タックスヘイブン対策税制の概要
外国関係会社で、租税負担が著しく低く(租税負担割合が20%未満※)、本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有していないことや事業の管理等を自ら行っていないなど、経済活動基準を満たしていない場合には、租税回避の意図が高いとして、外国関係会社の所得を日本の株主等の所得に合算して、日本で税金が課されます。
※ペーパーカンパニー等は27%未満
また、経済活動基準を満たしていたとしても、外国関係会社の利子や配当等の部分適用対象金額が一定の規模を超えている場合には、その部分対象金額が日本の株主等の所得に合算されます。
(詳細は、国際税務Vol.45 タックスヘイブン対策税制 、国際税務Vol.54タックスヘイブン対策税制②をご覧ください。)
個人のおける取り扱い
個人株主等に対しては、雑所得として課税されます。具体的には①から②を引いた金額が雑所得の金額となります。
(②の金額は①の金額が限度です。)
① 対象外国関係会社等の所得金額から、その事業年度開始の日前7年以内に生じた欠損金額を控除するなど一定の調整を加えた金額のうち、個人株主等の持分割合に相当する金額
② 対象外国関係会社等の株式等を取得するために要した負債の利子(実質支配関係の場合を除く)や、その会社から受ける配当等の額(下記、二重課税の排除に該当するものに限る)に係る外国所得税の額
法人株主との比較
法人株主等と個人株主等で適用される規定はほとんど同じですが、いくつか違いがあります。
① 子会社配当金
法人株主等の場合、外国関係会社が一定の子会社から配当を受け取りますと、その配当金は合算の対象となる金額から除かれます。
しかし、個人株主等の場合にはこの規定がありませんので、その配当金についても合算の対象となります。
② 外国税額控除
法人株主等の場合、外国関係会社に対して課された外国法人税を株主等が納付したものとみなして、外国税額控除を適用することができます。
しかし、個人株主等にはこの規定がありません。
③ 二重課税の排除(課税済配当額の調整)
株主等が、外国関係会社から配当等を受ける場合には、その配当等を受ける事業年度及び前年以前10年内の各事業年度で合算対象となった金額の合計額に達するまでの金額は、その配当所得から控除されます。ただし、個人株主等の場合には、前年以前10年内ではなく3年内と期間が短くなっております。
④ 適用税率
個人の場合、雑所得として他の所得と合算されて総合課税となりますので、超過累進税率によって課税されます。場合によっては最高税率の適用を受けることもありますので、法人株主等よりも税負担が大きくなる可能性があります。
添付書類
法人株主等と同様のものが必要になります。
なお、所得税申告書には、タックスヘイブン対策税制に該当するか、合算金額はいくらになるか計算する別表の様式がないため、法人税申告書の別表(例えば、十七(三)関連)などを用いて計算を行い、申告書に添付します。