国際税務Vol.54 タックスヘイブン対策税制② ~令和5年度税制改正~
タックスヘイブン対策税制②~令和5年度税制改正~
国際税務Vol.54
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今回は外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)について令和5年度に税制改正がありましたので確認していきたいと思います。
タックスヘイブン対策税制は、税負担の著しく低い国に外国子会社等を設立し、税負担の軽減・回避することを規制するためのものです。
しかし、租税回避の意図が無い場合でも、本税制の対象となる可能性があり、申告書に外国子会社の財務諸表等を添付する必要があるなど申告手続きが煩雑でしたが、今回の改正により事務負担が軽減します。
改正前の概要
タックスヘイブン対策税制は、一定の外国関係会社の税負担が低い場合に、外国関係会社の所得を親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度です。
ペーパーカンパニーや事実上のキャッシュボックス等の特定外国関係会社は租税負担割合が30%未満、それ以外の外国関係会社は20%未満の場合に税負担が低いとされます。
なお、外国関係会社に経済実態があるとして、一定の経済活動基準を満たす場合には、一定の受動的所得を除き、上記合算課税の対象外となります。
(改正前の詳細は、国際税務Vol.45 タックスヘイブン対策税制 – SUパートナーズ税理士法人 をご覧ください。)
令和5年度税制改正
主として2つあります。
① 特定外国関係会社の適用対象となる租税負担割合の変更
② 添付書類の緩和
租税負担割合の変更
まず、特定外国関係会社の合算課税の対象となる租税負担割合が27%未満(現行30%未満)に引き下げられました。経済産業省によりますと、この引き下げによりドイツ、韓国、米国のカリフォルニア州やニューヨーク州など日本企業が多数進出している国・地域が新たに合算課税から除外される可能性があります。
適用時期は、日本の親会社における令和6年4月1日以後に開始する事業年度となりますので注意が必要です。
例えば、親会社と特定外国関係会社の決算期を3月末とすると、関係会社の令和6年3月期の所得は、決算末日から2カ月後の令和6年5月末日を含む、親会社の令和7年3月期に合算となります。
令和7年3月期は親会社の令和6年4月1日以後に開始する事業年度となるため、関係会社の令和6年3月期の租税負担割合が27%未満かどうかで判定を行うことが出来ます。
添付書類の緩和
現行制度では、外国関係会社の租税負担割合が20%未満(特定外国関係会社は30%未満)の場合には、外国関係会社の財務諸表等を親法人の申告書に添付しなければなりません。
具体的には、貸借対照表及び損益計算書、株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書、勘定科目内訳明細書、本店所在地国の税に関する申告書、株主名簿など。
これは、経済活動基準を全て満たし、合算課税の対象から外れた場合でも添付する必要があります。
今回の改正によって、経済活動基準を全て満たす外国関係会社が次のいずれかを満たす場合には、上記書類の添付が不要とされます。
① 配当等、受取利子等、固定資産の貸付や無形資産等の使用料などの部分適用対象金額が2,000万円以下
② 所得に占める部分適用対象金額の割合が5%以下
ただし、添付が不要となりますが保存は必要となりますので注意しましょう。
弊社の顧客にも、合算課税の対象外となる外国子会社を多数有する親会社もありますが、税負担割合が20%に届かないため、上記財務諸表等を各子会社から収集しておられました。国によっては財務諸表等の作成や税務申告時期が日本よりも遅く、また数も多かったため、今回の改正によって事務負担が軽減すると喜んでおられました。