国際税務Vol.51 国外事業者等との取引とインボイス制度~インボイス制度の確認を!~
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国外事業者等との取引とインボイス制度
~インボイス制度の確認を!~
国際税務Vol.51
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今回は国外事業者等との取引とインボイス制度の関係がテーマとなります。
インボイス制度によって、取引先にインボイス登録の確認や請求書の見直しなど事務負担が増えた方もかなり多いのではないでしょうか。
この制度は国内だけではなく、国外の事業者や外国法人なども対象となります。
ただし、国外事業者等との取引のなかには、インボイス制度の対象外の取引もありますので、確認していきたいと思います。
インボイス制度とは
インボイス制度は、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額を伝えるためにインボイス(適格請求書)を交付する制度です。
買手:インボイスが無ければ仕入税額控除を受けることができません。
売手:インボイス発行事業者の登録を行わなければ、インボイスを発行することができません。
<現行法上(インボイス制度前)>
買手が110円(内消費税10円)を売手から仕入れて、220円(内消費税20円)で販売した場合
買手側:売上に係る消費税20円-仕入に係る消費税10円(仕入税額控除)=10円の消費税を国に納付します。
<インボイス制度後>
売手がインボイス発行事業者の登録を行っていない(インボイスを発行できない)場合、買手において仕入税額控除ができない※ため、買手は20円-0円(仕入税額控除)=20円の消費税を国に納付する必要があります。
※令和11年9月末までは一定割合を控除できる経過措置があります。
これは売手が国外事業者や外国法人などであっても同様の取扱いとなります。
国外事業者等との取引
国外事業者等との取引で消費税がかかるケースとして、例えば外国法人等の日本支店を通して国内に所在する商品を購入した場合や、国内で役務の提供を受けた場合が考えられます。
その際には、
①国外事業者等が課税事業者であるか?
②インボイス登録を行っているか?
の2点、確認を行う必要があります。
免税事業者である売手がインボイス登録をする場合、下記デメリットがあります。
①インボイス登録事業者になりますと自動的に課税事業者となり、日本の消費税を納める分コストが増えます。
②インボイスは「インボイス発行事業者の登録番号」「適用税率」及び「税率ごとに区分した消費税額等」などの記載が求められ、事務負担が増えます。
そのため、インボイス登録を拒否された場合には、消費税分の値引き交渉を行うことや別の取引先を探すなど対応が必要になるかもしれません。
輸入消費税とインボイス
国外事業者等から商品を輸入して、輸入消費税を税関に支払う場合には、国外事業者等はインボイス登録が必要なのでしょうか?
輸入消費税は従来通り、帳簿への記載・保存及び輸入許可証等の保存が仕入税額控除の要件のため、国外事業者等のインボイス登録の有無にかかわらず、買手(輸入申告者)において仕入税額控除が認められます。
電気通信利用役務の提供とインボイス
電気通信利用役務の提供とは、インターネット等を介して行われる電子書籍や音楽、ソフトウェアなどの配信や広告の配信・掲載、クラウド上のソフトウェアやデータベースを利用させるサービスなどです。これらの役務の提供を受ける者の住所等が国内の場合には、消費税がかかります。
このうち、取引条件等から役務の提供を受けるのが通常事業者に限られるものは、売手である国外事業者に代わり、買手である国内事業者が消費税を納める義務があります。(リバースチャージ方式)
リバースチャージ方式の場合には、帳簿への記載・保存が仕入税額控除の要件とされているため、国外事業者等のインボイス登録の有無にかかわらず、仕入税額控除が認められます。
消費者向け電気通信利用役務の場合
事業者向け以外の消費者向け電気通信利用役務の提供は、一般的な課税仕入れと同様に国外事業者等がインボイス登録を行っていないと、仕入税額控除の対象となりません。
インボイス制度以前は、国外事業者等が登録国外事業者でなければ仕入税額控除が認められませんでした。しかし、令和5年10月1日以後、登録国外事業者制度は廃止され、インボイス制度の適用関係に吸収されます。そのため、元々の登録国外事業者はインボイス発行事業者へ移行します。