国際税務Vol.49 国外国法人に対する支払利子損金算入制限
外国法人に対する支払利子損金算入制限
国際税務Vol.49
皆様こんにちは。
国際税務に欠かせない論点の一つに過少資本税制があります。既にご存知の方もいらっしゃると思いますが簡単に説明すると、内国法人が海外の関連会社から資金提供を受ける際に出資に代えて過大な貸付けを受け、その借入金に係る利子を損金に算入して税負担を軽減しようとする租税回避を防止するために設けられた制度となります。
具体的には、内国法人が国外支配株主または資金供給者等に負債の利子等を支払う場合において、その国外支配株主等および資金提供者等に対する負債に係る平均負債残高が国外支配株主等の資本持分の3倍に相当する金額を超えるときは、当該事業年度において国外支配株主等および資金提供者等に支払う負債の利子等の額のうち、その超える部分に対応する金額は、損金の額に算入することができません。
外国の企業が日本に進出する際の形態としては日本に子会社を設置することが一般的になっていますが、あえて現地法人を設立せずに日本に支店を設置する場合もあります。その場合日本支店はあくまでも「外国法人」の日本支店であって「内国法人」にはなりません。
上記の過少資本税制は内国法人に適用される制度なので、外国法人の日本支店については適用されないこととなります。それでは、外国企業が日本に進出する際に支店形態を選択すれば、際限なく外国から資金を調達して租税負担を回避することが可能なのでしょうか。
もし可能であれば現地法人を設立する外国企業が減ってしまうかもしれませんが・・・実際、外国法人日本支店に対しては日本子会社に適用されるような過少資本税制の適用はないのですが、外国法人日本支店に特有の恒久的施設(PE)帰属利子の損金算入制限規定が適用されます。
PE帰属利子の損金算入を制限する規定は、外国法人日本支店の「PE純資産の額」が「PE帰属資本」に満たない場合、その外国法人のPEを通じて行う事業に係る負債利子額のうち、その満たない金額に対応する部分の金額をその外国法人のPE帰属所得の計算上、損金の額に算入しないことを目的とする制度です。
損金不算入額は以下の算式で計算されます。
PEを通じて行う事業に係る負債利子額 *1×(PE帰属資本*2 – PE純資産額) / PE帰属利付負債
*1:基本的に以下3種類の利子の額が含まれます。
・PEを通じて行う事業に係る負債利子の額(第三者や関係会社等に支払う利子の額)
・PEから本店等に対して支払う内部利子(本支店間利子)の額
・本店配賦経費に含まれる負債利子の額
*2:PE帰属資本は、資本配賦法と同業法人比準法の2つの方法により計算されることになりますが少々複雑なため、実務上は資本配賦簡便法を採用することが多くなるかと思います。
資本配賦簡便法
(外国法人全体の総資産の平均残高 – 総負債の平均残高) ×PEに帰属する資産の帳簿価額 / 外国法人全体の帳簿価額
過少資本税制との大きな違いは、対象とする利子の範囲が広いということです。過少資本税制においては、基本的に海外親会社等の国外関連者へ支払われる利子に限られています。
しかしPE帰属利子の損金算入制限規定においては、上記のとおり第三者へ支払う利子についても損金不算入の対象とされます。両者の規定は趣旨は同じであっても細かい点でいろいろと異なる点があるため、海外から資金を調達する際には注意深く進める必要があります。