国際税務Vol.45 タックスヘイブン対策税制
タックスヘイブン対策税制
~租税回避の意図は関係ありません~
国際税務Vol.45
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今回は外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)について確認していきたいと思います。
税負担の著しく低い国(タックスヘイブン)に外国子会社等を設立し、その会社を利用して取引を行うことにより、税負担を不当に軽減・回避することが可能です。
そのため、タックスヘイブン対策税制では、一定の要件を満たす外国子会社等の所得を内国法人である親会社の所得に合算して、日本の税金が課税される仕組みとなっております。
注意点として、租税回避の意図が無い場合でも、本税制の対象となる可能性があります。そのため、外国に子会社や関係会社がある場合には、適用対象会社となるか確認が必要です。
タックスヘイブンの対象会社
次の要件を検討していきます。①~④すべてを満たす会社はタックスヘイブン対策税制の対象となり、子会社等である外国法人の所得を親会社に合算する必要があります。
① 外国関係会社に該当するか
② 外国関係会社に係る株式等の保有割合が10%以上であるか
③ 租税負担割合は20%未満(30%未満)に該当するか
④ 特定外国関係会社、対象外国関係会社又は部分対象外国関係会社の
いずれかに該当するか
外国関係会社に該当するか
日本の居住者又は内国法人等が合計で外国法人の株式等(議決権や配当請求権など)の50%超を直接及び間接に保有している場合には、その外国法人は外国関係会社に該当します。また、実質支配関係がある場合も該当します。
外国関係会社に係る株式等の保有割合が10%以上であるか
親会社(その同族株主グループを含む。)の外国関係会社に係る株式等の保有割合が10%未満であれば、本税制の適用はありません。
(実質支配関係があれば、別途検討が必要です。)
ただし、直接の保有割合だけではなく、間接の保有割合も合計して判定を行います。
租税負担割合が20%未満に該当するか
その外国関係会社の所得に対して課された税金の割合(租税負担割合)が20%以上であれば、本税制の適用はありません。
ただし、後述の特定外国関係会社の場合、租税回避を目的としている可能性が高いため、20%ではなく30%で判定を行います。
また、こちらに該当しますと後述するように貸借対照表などの提出が必要となります。
特定外国関係会社
いわゆるペーパーカンパニーやキャッシュ・ボックスなどといわれるものです。
詳細は割愛しますが、事務所等の実体がなく事業の管理支配を自ら行っていない会社や有価証券等の保有割合が高い会社です。
対象外国関係会社
次の4つのうちいずれかを満たさない外国関係会社は、経済実態が無いとして、対象外国関係会社となります。
- 事業基準
主たる事業が株式等の保有(一定の統括会社を除く)、工業所有権・著作権等の提供又は船舶・航空機の貸付(一定のものを除く)でないこと
- 実体基準
本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること
- 管理支配基準
本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること
- 非関連者基準又は所在地国基準
主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業又は航空運送業である場合には、主として関連者(50%超出資会社等)以外の者と取引を行っていること
それ以外の業種については、主として本店所在地国で主たる事業を行っていること
部分対象外国関係会社
特定外国関係会社や対象外国関係会社に該当しない場合でも、配当や受取利子、使用料など受動的所得が発生している外国関係会社は部分対象外国関係会社となります。
部分対象外国関係会社は、配当などの所得金額(後述の「部分適用対象金額」)が合算の対象となります。
ただし、このままでは配当などが発生しているすべての外国関係会社が対象となってしまいます。そのため、外国関係会社が次のいずれかに該当すれば、対象外となります。
- 租税負担割合が20%以上である場合
- 部分適用対象金額が2,000万円以下の場合
- 所得金額に占める部分対象金額の割合が5%以下の場合
合算金額
本税制の適用対象となった特定外国関係会社又は対象外国関係会社の所得は、会社単位で親会社の所得に合算されます。
合算される金額は、その外国法人の所得を日本の法令に基づいて計算されます。
(現地の法令に基づいて計算をする方法もあります)
その際、受取配当等の益金不算入や寄付金の損金不算入など調整を行わないものが多数ありますので注意が必要です。
そうして調整を行った所得に親会社の直接間接の持分割合等を乗じたものが、親会社に合算されます。
部分適用対象金額
主として配当等、受取利子等の金融所得、固定資産の貸付や無形資産等の使用料などの所得があります。また、その外国関係会社の資産規模や人員等の経済実体からみて、通常生じ得ないと考えられる異常所得も対象となります。
これらを保有する部分対象外国関係会社については、部分適用対象金額を一定の調整のうえ、親会社の直接間接の持分割合等を乗じたものが、親会社に合算されます。
書類の添付
租税負担割合が20%未満の外国関係会社(特定外国関係会社は30%未満)の貸借対照表及び損益計算書、本店所在地国の税に関する申告書、株主名簿などは親会社の確定申告書に添付しなければなりません。
対象外国関係会社に該当しない場合や合算する所得が無い場合でも提出する必要があります。