相続・事業承継Vol.45 国外財産調書制度
国外財産調書制度
相続・事業承継Vol.45
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の溝口です。
国外財産調書制度は、国外財産に係る課税の適正を図るため平成26年に導入されました。制度の導入から時間も経ち、認知されてきた制度といえますが、令和元年には同調書の不提出犯が初めて告発されました。
国外財産調書は所得税の確定申告とあわせて提出することがほとんどですので、所得税以外の税には無関係のようにも思えます。
ですが、国外財産調書の提出により財産の状況を税務署が把握することになるため、相続が発生した場合はその情報も利用されることになります。
そこで今回は国外財産調書制度についてあらためて確認してみたいと思います。
(国外財産調書不提出に係る罰則を初適用)
個人事業に係る売上代金を他人名義の海外預金口座に入金する方法で所得税を免れるとともに、多額の海外預金があるにもかかわらず、国外財産調書を提出していなかった
→制度創設後初めてとなる国外財産調書不提出に係る罰則を適用して告発している。
*令和元年度査察の概要_国税庁
https://www.nta.go.jp/about/organization/osaka/release/hodo/r01/sasatsu/index.htm
(制度の趣旨)
平成24年度税制改正において、適正な課税・聴衆の確保を図る観点から、国外財産を保有する方からその保有する国外財産に係る調書の提出を求める制度として創設され、平成26年1月から施行されています。
(制度の概要)
その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方は、その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、その年の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に提出しなければなりません。
(罰則)
国外財産調書に①偽りの記載をして提出した場合、②国外財産調書を正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合
→1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることがあります。
ただし、提出期限内に提出しなかった場合については、情状により、その刑を免除することができることとされています。
(提出がある場合の軽減措置)
国外財産調書に記載がある国外財産に係る所得税等又は国外財産に対する相続税の申告漏れが生じたときであっても、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税又は無申告加算税について、5%軽減されます。
(提出がない場合の加重措置)
国外財産調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合に、その国外財産に係る所得税等又は国外財産に対する相続税の申告漏れが生じたときは、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税又は無申告加算税について、5%加重されます。
(書類の提示等の求めに対し、提示等がなかったとき)
国外財産に係る所得税等又は国外財産に対する相続税の調査に関し修正申告等があり、その修正申告等の前までに、国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る一定の書類の提示又は提出を求められた場合に、一定の日までに提示等がなかったときは、過少申告加算税等の軽減措置は適用されず、加重措置が、5%加重から10%加重に変更されます。
国外財産調書の提出は税務署に対し財産を開示することになるため、義務とはいえ提出することに対し不安がある方もいらっしゃると思います。しかし、制度導入から時間が経ち、国外財産調書不提出に係る罰則を適用して告発なども行われています。
年末に所有する国外財産が5,000万円を超える方は、翌年3月15日までに国外財産調書の提出が必要となりますので、ご注意を頂ければと思います。
詳細は国税庁ホームページなどでご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7456.htm