国際税務Vol.40 国外関連者と借入金-利息の支払いにはご注意を-
国外関連者と借入金
-利息の支払いにはご注意を-
国際税務Vol.40
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の木下です。
今週は国際税務がテーマになります。
あるお客様から、下記のような質問がありました。
「外国の親会社から借入を行い、毎月利息を支払うことを検討しております。何か気をつけるべき点はありますか?」
関係会社間での資金の借入はよくありますが、国際取引となると留意すべき点が多々ありますので、確認していきましょう。
利息の支払には源泉税が発生
非居住者や外国法人に借入金の利息を支払う場合、20.42%の源泉徴収が必要となります。源泉税は支払日の翌月10日までに納付を行います。
なお、相手国との間に租税条約がある場合には、源泉税が軽減・免除される可能性があります。例えば日米租税条約ですと、20.42%ではなく、10%の税率となります。
租税条約の恩恵を受けるためには、事前に「租税条約に関する届出書」などの提出が必要となります。
今回の例ですと、国外の親会社が届出書の記入・署名を行い、国内の子会社が押印のうえ、子会社が国内の所轄税務署に提出します。
ほとんどの場合、非居住者や外国法人の居住者証明書が必要となります。
利息が費用とならない場合
次に親会社に支払う利息が法人税法上の費用として認められるか否か
検討が必要となります。
借入金などの利息は費用となるのに対し、株式などの配当は費用になりません。
そのため、配当ではなく多額の利息を支払うことにより、日本での利益を減少させ、外国の会社に利益を付け加えることが可能となります。
こういった手法を防止するため、主に過少資本税制、過大支払利子税制、移転価格税制が設けられております。
過少資本税制
親会社からの借入金が資本に対して多額の場合には過少資本税制の適用があります。
具体的には、
国外支配株主等に対する利付負債の平均残高 が 国外支配株主等による資本持分の3倍を超えることです。(救済措置はありますが)
※利付負債・・・借入金など利子の支払いの基因となるもの
※資本持分・・・総資産-総負債 と資本金等の額の大きい方
上記に該当すると、3倍を超える部分に対応する利息は費用として認められません。
そのため3倍を超えないよう、出資を増やす、借入金を減らす、またはデットエクイティスワップなどの対策が必要となります。
過大支払利子税制
利益に対して多額の利息を支払っている場合には、過大支払利子税制の適用があります。
具体的には
対象純支払利子等の額が調整所得金額の20%を超えることです。
※対象純支払利子等の額・・・対象支払利子等の額―控除対象受取利子等合計額
※調整所得金額・・・当期の所得金額に対象純支払利子等の額や減価償却の額の加算などをした金額。
上記に該当すると、20%超えた部分に対応する対象純支払利子等の額は費用として認められません。
注意点として、外国親会社など国外関連者に対する利息等が対象でしたが、
平成31年度税制改正により、非関連者に対するものも過大支払利子税制の対象となりました。
ただし、その事業年度の対象純支払利子等の額が2,000万円以下などの場合には、適用がありません。
移転価格税制
借入金に対して利息が多額の場合には、移転価格税制の対象となります。
具体的には、国外関連者に対する利息(利率)が独立企業間価格(金利)を超えている場合には、超えている部分が費用とならない可能性があります。
独立企業間価格とは簡単に説明しますと、非関連者間で取引を行う場合に設定されるであろう価格となります。
金利の設定に際しては、以下の順に検討を行うこととされています。
- 貸手が実際に第三者に貸している金利と同様の条件(通貨、貸付金額、貸付期間、借手の信用力など)での利率
- 借手の銀行調達金利と同様の条件での利率
- 貸手の銀行調達金利と同様の条件での利率
- 貸付資金を国外関連者との取引と同様の条件において、国債等で運用した場合の運用利率
印紙税に注意
借入金の契約書が日本国内で作成された場合、借入金の金額に応じて印紙税が課税されます。基本的に契約書は双方の署名押印が完了した時点が課税されるタイミングとなります。そのため、最後の署名押印をどちらで行うかの検討が必要となります。