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国際税務Vol.36 海外勤務者への賞与の支給

海外勤務者への賞与の支給

国際税務Vol.36

 

皆様こんにちは。

 

グローバル展開している企業は活発に人材を海外へ派遣したり、または海外から呼び寄せる機会が多々あるかと思います。

彼らに対して支払う給与や賞与等については、日本の税制のみならず外国の税制の影響もあるため、慎重な検討が必要となります。今回は海外へ出向した日本人に対して賞与を支給した場合について、日本の税制面から考察してみたいと思います。

 

出向後に賞与を支給された場合

Aさんは2年間の予定でアメリカの子会社に派遣されることになりました。

①6月1日に日本を出国、②7月31日に賞与を支給されました。賞与の③支給対象計算期間は1月1日~6月30日となります。

この場合、日本における課税はどのようになるのでしょうか。

 

 Aさんは出国後非居住者となるため、国内源泉所得のみが源泉徴収の対象となります。

出国後に支給される賞与の支給対象計算期間に、国内の勤務に対する期間と国外の勤務に対する期間がある場合は、按分して国内の勤務に対する期間に対応する金額を源泉徴収の対象とします。

すなわち、1月1日から6月1日までの期間に相当する分は国内源泉所得となり、支払いの際に20.42%の源泉が必要となります。

 

 ちなみに非居住者とは日本の税法において居住者以外の者、とされているのですが、居住者とは

日本に「住所」があるか、

または現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人としています。

したがって、1年以上の予定で国外に出向を命じられている者は非居住者として扱われます。

 

 国内勤務に対応する部分のみ日本で課税されるという仕組みはわかり易く納得のいく計算方法ですね。それでは、Aさんが帰国した後、賞与が支給された場合はどうなるでしょうか。

 

帰国後に賞与を支給された場合

 2年間の出向期間を終え、Aさんは①5月31日に帰国しました。

②支給対象計算期間が1月1日~6月30日である賞与が帰国後の③7月31日に支給されました。出国時の計算方法を踏襲すれば、支給対象計算期間のうち国外勤務をしていた1月1日~5月31日に対応する部分は日本で源泉される必要はないはずですよね?

 

 しかしながら、Aさんが帰国して居住者になってから賞与を支給する場合は、その支給対象計算期間に国外勤務に対する期間が含まれている場合であっても按分計算をせず、全額が源泉徴収の対象になります。

 

 出国時と帰国時の計算方法に整合性がありませんが、帰国後は即時に居住者となり、全世界所得が課税対象となってしまうためこのような取り扱いとなっています。

 

まとめ

賞与の支給対象計算期間に国内勤務分と国外勤務分が両方含まれている場合には、出国する場合と帰国した場合とそれぞれ課税方法が異なるため、注意が必要となります。