相続・事業承継Vol.35 財産を守る!民事信託 -その他活用編-
財産を守る!民事信託 -その他活用編-
相続・事業承継Vol.35
皆様こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。
皆様も感じていらっしゃると思いますが、家族形態が多様化していますよね。
昔のように夫婦と子供3人が幸せの家庭像などは稀となり、男女問わず独身、シングルマザー、バツイチ、夫婦2人、お子様の数も様々など多様化しています。
幸せに一定の形はありません。それぞれの幸せがあり、それぞれの悩みがあります。
そんな多様化する時代の悩みに民事信託が役に立つのかというと、役に立てる場合があります。
【障害を持った子供の将来が心配なご両親】
例えば、障害を持ったお子さんを抱えていらっしゃるご家族の場合、両親としては自分たちがいなくなった後の子供の生活が心配です。
兄弟やいとこや信頼出来る知人がいれば、民事信託を使うことができます。
例えば、2人の子供のうち1人が障害を持っている場合を考えてみましょう。
Aが障害者、Bが健常者とします。
両親が健康なうちに民事信託を設定します。
自分自身が委託者であり、受益者でもある自己信託と言われるものです。
ただし、すべての受益権を自分が持っていると信託が1年で解除されてしまうため、受益権複層化信託として、元本受益権をB(健常者)に持たせます。
こうすることで両親が健康なうちから継続して自己信託が設定できます。
※複層化信託とは
信託期間中の収益を受け取れる権利(収益受益権)と信託終了後に信託財産を受け取れる権利(元本受益権)をわける信託を言います。
このようにした上で、両親の判断能力が低下したり、亡くなった時には受託者がB(健常者)になり、受益者をA(障害者)になるように設定しておけば、A(障害者)のための生活費を、B(健常者)が管理して手当してあげられます。
A(障害者)が亡くなれば信託が終了してB(健常者)が帰属権利者として取得することになります。
監督人を置くかは、家族関係次第ですね。
A(障害者)の遺留分の問題もありますので、専門家にご相談ください。
【おひとり様】
もうひとつの例として、おひとり様です。
結婚しなかった又はバツイチだが子供がいなかったなどは、最近よくあることです。
そういった場合でも、姪や甥がいて小さい頃は自分の子供のように可愛がったなどということも聞きます。
そのような場合には、その甥姪を受託者にしてご自身が生きている間は収入を得て、亡くなった時には兄弟ではなく、甥姪を帰属権利者として財産を取得させることはいかがでしょうか。
また身上看護については、任意後見制度を使って甥姪が本人に代わり老人ホームなどの契約が出来るようしておくのが良いのではないでしょうか。
甥姪も親族ではありますが、介護などは大変なことです。
しかし、財産を最終的に引き継ぐことが前提であれば頑張れることもあると思います。
こう言うと「結局お金か」、と考えてしまう方もいらっしゃいますが、お金はあの世に持っていけません。
どうせ残った財産は法律で兄弟甥姪にいくのですから、どうせなら甥姪のうち気持ちが通じそうな子を選んで、少し恩を着せたりしながら(笑)甥姪に人生の最後のお手伝いをお願いしてはどうでしょう?
きっと人生最後の思い出の1ページが作れるのではないでしょうか。
このように民事信託は様々な利用方法が可能です。このほか自分の死後のペットの世話が心配としてペットの世話についての信託も行われています。
皆様も活用を検討されてはいかがでしょう?