相続・事業承継Vol.21 除外合意・固定合意 株式分散対策に、争族対策に
除外合意・固定合意
株式分散対策に、争族対策に
相続・事業承継Vol.21
皆様こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の押味です。
「うちは子供たちが仲いいから大丈夫だ」…いいえ、揉めます。
「事業承継者は長男に決めているから大丈夫だ」…いいえ、揉めます。
「うちはそこまで財産が多くないから大丈夫だ」…いいえ、揉めます。
「相続税は少ない方がいい」とは誰しもが思いますが、
税金が少なければ万事問題なしといえるでしょうか。
問題は、税金よりもむしろ“争族”の方が多い気がします。
今回はそんな争族対策に活用できる、除外合意と固定合意についてご紹介します。
結論
結論から言えば、この制度を使って、自社株について、遺留分の計算から除く、あるいは金額を固定させてしまうこと。
それによって、相続が生じた際の遺留分を巡った争いを避けよう、というものです。
問題の所在
そもそも、遺留分を巡った争いとはどのようなことでしょうか。
また、自社株がどのように影響するのでしょうか。
相続人が、長男、次男、配偶者の3人の場合を例に考えてみましょう。
まず、遺留分とは相続人に保証されている最低限の相続の権利です。
つまり、例えば被相続人が長男にすべての財産を遺贈しても、
次男や配偶者は“遺留分に基づいた一定の割合の財産”を相続することができます。
また、この“遺留分に基づいた一定の割合”の計算でのポイントが2つあります。
①相続の際の被相続人の財産のみならず、特別受益(簡単に言えば、誰かに対する生前贈与のすべて)が含まれる。
②①の財産や特別受益の評価額は、相続開始時の価額になる。
自社株が、この遺留分や争族にどのように影響するかというと、想定されるのは次のようなパターンです。
生前に株式を長男にすべて贈与した
→長男が頑張って業績を上げて、株価も上げた
→相続発生時に、その上昇した株価に基づいて、次男や配偶者が遺留分を請求してきた
→結局自社株の一部を手放したり、納税に苦しむ羽目に…
除外合意や固定合意の効果
このとき、除外合意や固定合意がどのように作用するのでしょうか。
遺留分の計算の際、
固定合意では自社株の価額を贈与時の金額に固定(つまり後の株価上昇の影響を受けない)されますし、
除外合意では自社株の価額は遺留分の計算に算入しません。
これらによって、後継者以外の方の遺留分が小さくなって(株価が上がっていれば、ですが)、
長男への遺留分減殺請求額が小さくなって、無用な争い、苦しみが減る、となるわけです。
手続き
贈与
→推定相続人全員で合意
→経済産業大臣の書類の確認
→家庭裁判所の許可
ソフト面から考えてみる
制度以外にも、それぞれの気持ちの面から考えてみましょう。
こちらの方が大事だと思います。
対策をせずに争いが起きるパターンでの、
それぞれの想いはきっとこのようなものです。
場面は、①株式贈与時→②相続発生時の2つ場面をイメージしてください。
長男
①「よし頑張るぞ」
→②「こんなに頑張って株価も上がったのに遺留分で取られるのか…
納税も大変だし、株式も手放したし、なんだったのだろう…」
配偶者や次男
①「長男、頑張ってね。」
→②「自社株も財産になるし、こんなに価値があるのか、
長男ばかりずるい!遺留分を主張してやる!」
除外合意や固定合意を導入することによる目に見えない効果
次のようなものがあると思いますので、是非ご検討を。
・贈与時、つまり被相続人となりうる人が存在しているときに話が進められる。
・相続発生時ではなく、贈与時に自社株が相続財産になることや遺留分についての理解をして、合意をしておくことができる。
・そして、揉めない