相続・事業承継Vol.3 私たちの口座情報を世界の税務当局が共有!? ~パナマ文書から見る情報交換協定~
私たちの口座情報を世界の税務当局が共有!?
相続・事業承継 Vol.3
~パナマ文書から見る情報交換協定~
あけましておめでとうございます!本年もどうぞ宜しくお願い致します。
SUパートナーズ税理士法人の乾です。
日本の市場は円安・株高でスタートしましたが、
外的な要因に頼っている経済状況ですから今年も波乱がありそうです。
トランプが大統領になった後どうなるのでしょうね。
さて、昨年大きな話題となったパナマ文書ですが、
そのあとは世間も忘れてしまったようです。
国税庁も忘れてしまった、、、わけではありません。
平成28年8月25日にパナマ共和国と租税情報交換協定の署名が行われ、
両国の内部手続きを経て効力が発生します。
この租税条約に基づく情報交換とは、
①要請に基づく情報交換
②自発的情報交換
③自動的情報交換
の3つがあります。
今回は③自動的情報交換についてご説明したいと思います。
法定調書から把握した非居住者等への支払等
(配当、不動産所得、無形資産の使用料、給料・報酬、キャピタルゲイン等)
に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ一括して送付するものです。
弊社でも数年前にご相談を受けたことがあります。
Aさんによると、国税庁から某国の利子所得が漏れているのでは?と指摘を受けた。
その方は日本に住所を持たれ日本でも所得をえていましたが、
実態はほとんどの時間を海外で過ごされているような状況でした。
日本での所得を顧問税理士に依頼して、居住者として申告していました。
居住の判定は様々な状況を総合的に判断するため非常に難しいため、
ここでは触れません。
結果として指摘を受けた部分は修正申告し、
その後この方は非居住者になられたようです。
ちなみに税務署から申告漏れの指摘を受けたときに、
安易に知らないと嘘をついた場合には重加算税(35%)が課せられる可能性が高いです。
十分ご注意ください。
この相談の国税庁の指摘は某国からの情報交換に基づく情報でした。
どういう制度?
OECDは平成26年に、非居住者に係る金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準である共通報告基準などを公表し、G20がこれを承認しています。
これによって日本では平成27年の税制改正により国内の金融機関は
氏名、住所、居住地国、口座に関する情報を
国税庁に情報提供しなければならなくなりました。
平成29年1月1日以降の情報を暦年単位で提供することになり、
最初の報告は平成30年4月30日までに行われ、
9月30日までに各国と情報交換が行われることになります。
日本の租税条約等のネットワークも平成27年11月時点で
64条約(93か国・地域に適用)まで拡大しており、
執行共助条約については日、米、英、仏、伊、韓等54か国となり、
国同士が協力して滞納者から取り立てることもできるようになっています。
昨今の貧富の差が拡大するにつれ、
国外の所得の申告漏れに対して国民感情も相当に厳しいものがあるため国税庁も力を入れています。
申告漏れの金額が多額になれば刑罰もあり、
財産だけでなく心身の負担も計り知れないものです。
早目の税務対応が身を守ることになります。