国際税務Vol.4 備えあれば憂いなし~移転価格税制の文書化についてのルール~
備えあれば憂いなし
国際税務Vol.4
~移転価格税制の文書化についてのルール~
こんにちは。寒い日々が続いていますが体調を崩されたりしていないでしょうか。
春を待ちわびながら、冬の澄んだ空気の心地良さに浸る今日この頃です。
さて今週は移転価格の文書化がテーマのSUレターです。
移転価格税制の歴史
海外展開をしている企業なら留意しなければならない移転価格税制ですが、
アメリカにおいてはその歴史は古く、1920年頃から規定が存在し、
それ以来着々と法整備が行われてきました。
一方日本における歴史はあまり長くなく、1986年の税制改正により初めて導入されました。
1980年代後半にアメリカの税務当局である米国内国歳入庁(IRS)が、
アメリカに進出した日本の自動車メーカー等をターゲットとして移転価格課税を次々と行い、次第に日本における認知度が広まってきました。
長い歴史の中で効率的に整備されたアメリカの移転価格税制に比べ、
創設当初の日本の移転価格税制はいろいろと不備な面も多く、
その不備の一つが文書化に関するものでした。
文書化について
今までも移転価格の検証にあたって必要な資料の提出は求められていましたが、
どのような書類を具備したらいいのかが明確になっておらず、対応に苦慮する企業が多いのが実態でした。
とりあえずはアメリカの例に倣い揃えてみたものの、
当局からは「これではだめだ」と言われ、じゃあどうすればいいの!という混乱があったことも。
2016年度にようやく租税特別措置法が改正され、具体的に準備すべき文書が明確化されました。
また、それと同時に求められた資料の提出がない場合には推定課税を行うことができるとされました。
具体的な文書化の内容
その内容ですが、大きく分けて
1 国外関連取引の内容を記載した書類
2 独立企業間価格を算定するための書類
から成ります。
1 について主だったものを挙げると、
・国外関連取引に係る資産の明細や役務提供の内容
・国外関連取引当事者が果たす機能や負担するリスク
・国外関連取引を行う無形資産の内容の説明
などとなります。
2については、肝心の独立企業間価格に関するものなので重要なポイントとなります。算定は最適な方法「ベストメソッド」に基づいて行う必要があり、
1で記載した事実関係を基に選定し、その理由を記載する必要があります。
どの算定方法を採用するかによって結果もかなり変わってくるので慎重に検討し、
税務当局からの反論があっても、十分に説明可能な状態にしておかなければなりません。
具体的な算定はデータベースを用いる場合が多く、専門知識及び高額な使用料が発生することから納税者だけでの対応が非常に困難です。
必要に応じて専門家のサポートを得るのが効率的な運用になるかと思います。
移転価格調査は扱う金額が大きいこともあり、
当局と納税者の熱気すさまじい修羅場が繰り広げられることも
しばしばです。
理不尽な課税を受けないためにも、事前に入念な準備を行っておくことが求められます。