相続・事業承継Vol.6 一般社団法人と相続対策?~一般社団法人の活用~
一般社団法人と相続対策?
相続・事業承継Vol.6
~一般社団法人の活用~
こんにちは。SUパートナーズ税理士法人の乾です。
4月になり新年度スタートですね。
改正された新税制がスタートするため、これから上場会社さんのお客様から少しずつ質問が出てきたりします。
自分の中でもまだしっくりきていない新税制を回答するのは非常に神経を使います。
しかし、人間追い込まれないと何事もできないものです(泣)。上場会社のお客様があるから町の税理士事務所よりは少し早めに身につくのでしょうね。頑張りたいと思います!
今回は、前回の「一般社団法人の概要」
に続き、具体的にどう使っていくかを見ていきたいと思います。
相続税対策を考える際に個人の資産を法人に移す方法は昔から使われています。
この法人を、株式会社などではなく一般社団法人で行おうというのが今回ご紹介する方法です。
パターン1
個人の財産を一般社団法人に贈与するパターンです。
贈与して財産が一般社団法人に移れば、
その財産は個人のものではありませんので相続税の対象外となります。
ここで考えなければいけないことがいくつかあります。
①まずは、一般社団法人の性格を2階型の非営利又は共益型としなければ、
一般社団法人側で受贈益が計上され法人税等が課税されます。
②次に、移転する資産に含み益がある場合には、
その個人にみなし譲渡所得税(所得税法59条)がかかります。
この場合個人は対価をもらっていませんが、
法人に時価で譲渡したとして含み益に課税されますので、
移転資産の選定には注意が必要です。
③そして、一番注意しなければならないのは
個人の相続税、贈与税の不当減少(相続税法66条4項)と判断されないかどうかです。
もしそのように事実認定された場合には、
一般社団法人を個人とみなして贈与税が課される
(同時に課税される法人税は控除されるため二重課税にはなりません)
こともありますので、その設立運営には充分な注意が必要となります。
従いまして、税金を回避したいだけの理由ではかなりハードルの高いスキームとなります。
パターン2
個人の資産を一般社団法人に譲渡する方法です。
こちらも移転した財産については、
個人のものではありませんので相続の対象外となる点は変わりませんが、
譲渡であるため対価(金銭又は債権)をもらいますので、
その金銭又は債権についてどうするか、ということはあります。
このスキームの場合、一般社団法人は基本的に1階、2階型のどちらでも構いません。
ここで考えなければいけないのは譲渡価額です。
時価であれば個人側、法人側ともに税務上問題ありません。
時価以外(低額)で譲渡した場合に、
みなし譲渡(所得税法59条)の規定の適用に注意すべきこととなりますし、
一般社団法人側では時価との差額について受贈益課税されることになります。
しかし、その一族として継承していきたい財産がある場合などに有効なスキームです。
個人が一般社団法人の持ち分を持たないという特徴から、
移転後については相続税の対象範囲からは外れることになるというのが、
株式会社などを利用する場合とまったく違う点ですね。
最近の上場会社の株主を見ていると、一般社団法人○○○といった株主が出てくることも多くなりました。
これはおそらく創業家の株式を持分のない一般社団法人に移しているのだと思われます。
株価が上がっても個人の財産とは無関係となりますから、
相続税のことを気にせず業務に邁進できます。
これからは一般社団法人での起業もありかもしれません。
最後に、パターン1の「相続税を不当に減少する場合」とは?とひっかかっている方もいらっしゃると思います。
これについては、次回のSUレターでご紹介したいと思います。
※SUレター発行日現在の法令により記載しておりますが、将来の改正及び財産評価基本通達6項(この通達の定めによりがたい場合の評価)の適用がある可能性もございます。
(この通達の定めによりがたい場合の評価)
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。