国際税務Vol.9 海外で不当な課税を受けたら ~泣き寝入りしないために~
海外で不当な課税を受けたら
国際税務Vol.9
~泣き寝入りしないために~
経済のグローバル化が進み、海外の会社と取引する会社も増えています。制度、文化、法律等が異なる国との取引にはリスクが潜み、時には現地で不当な課税を受けることもあります。そんな時はどうしたらいいのでしょうか?
さて今週は国際取引に関する救済措置がテーマのSUレターです。
どういった課税問題があるか?
地球は広い。持参金が少ないからと火をつけられる花嫁がいたり、
自由恋愛は家族の名誉を汚すとして名誉殺人が行われたり、
本当に現代の話なのか?と耳を疑う出来事が起こっている国、地域があります。
日本人が考える「当たり前」のことは、海外では通用しないことも多々あり、
ビジネスにおいてもそれは常に心に留めておいておかねばなりません。
近年、海外取引を通じて現地で不当な課税を受ける日本企業が増加しています。
特にアジア新興国との取引に多く見られ、例えば・・・
・移転価格税制は比較対象の精度が命なのに、
全く異なる業態、業種の企業間取引を比較対象とされた!
・海外からの一時的な出張者がPE(恒久的施設)として認定され、
現地で課税されてしまった!
・外国の子会社が日本の親会社に支払った技術指導料等を
経費に算入することを制限された!
などなど。
そんな時、現地で争ったとしても勝つ見込みが薄いと最初からあきらめたり、
最初はがんばって抗戦しても途中で挫折して二重課税を受け入れてしまうケースが多いようです。
でも待って!
簡単にあきらめないでほしいのです。
租税条約に基づく“相互協議”を利用!
現地の当局とかけあっても埒が明かない場合、
国際法に基づく救済手段である租税条約に基づく相互協議を利用するという手もあります。
どちらにどれだけ取り分があるのが適切だよね、と課税当局間が話し合って、
二重課税が生じないように調和的な解決を図ってくれるのです。
ただし、協議には長時間を要することが多く、数年かかることはザラにあります。
制度に詳しい専門家の力を借りるとなるとコストがかかってしまうこともあります。
また、全ての案件が解決するわけではなく、未解決のまま放置されてしまうこともあるようです。
決して万能の手段ではありませんが、円満に解決したケースも多々あり(筆者も関わった経験があります!)
泣き寝入りする前に検討すべき方法であることは確かです。
WTOの制度を利用!
相互協議は租税条約に基づく税務の制度ですが、
WTO(世界貿易機関)にも紛争解決に関する制度があり、
加盟国であれば提訴することが可能です。
この制度においては第三者による中立的な判断を期待でき、
比較的短期に解決を望むことができるようです。
外国でトラブルに遭遇するとパニックに陥り正常な判断力を失いがちですが、慌てず騒がず、
そして決してあきらめずに勇気を持って対処するように心がけたいものです。