その他Vol.11 事業的規模で変わる不動産所得 ~5棟10室と実質基準~
事業的規模で変わる不動産所得
その他Vol.11
~5棟10室と実質基準~
こんにちは、SUパートナーズ税理士法人の木下です。
最近、マイナス金利などの影響もあってか、
個人で不動産賃貸を行う方が増えてきているように感じております。
ただ、不動産の賃貸といっても、副業でマンションの一室を賃貸している方や、
本業でビルを貸し付けている方など、
弊社のお客様だけでも様々な規模の方がおります。
実は、その不動産賃貸の規模が事業的規模か、
それ以外かで税金の計算が変わってきます。
事業的規模とは何か?事業的規模の特典とは何か?
今週はそんな賃貸規模と不動産所得がテーマのSUレターとなります。
事業的規模とは?
一般的には、アパートやマンションなら10室、一戸建てなら5棟、
賃貸していると事業的規模となります。
また、1棟は2室と同等とみなしますので、
アパート8室・一戸建て1棟の賃貸でも、事業的規模となります。
実質基準による判定
上記の形式的な「5棟10室基準」に該当しない場合でも、
実質的に事業かどうかの判断をすることができます。
裁決事例によると、
営利性や有償性
継続性・反復性
人的・物的設備の有無
精神的・肉体的労力の程度
などなど様々な点を考慮して判断を行います。
賃貸収入が1,500万円以上ある場合でも、
貸付先が一社のみ
貸付面積が小さい
賃借人が修繕費を負担すること
などを総合的に判断して、
事業的規模ではないとされた裁決もあります。
次に、事業的規模になった場合の特典について、主なものを見ていきましょう。
特典①65万円の青色申告特別控除
青色申告では、通常10万円を賃貸収入から経費として控除することができます。
さらに、
事業的規模で複式簿記への記帳や貸借対照表・損益計算書を備え付けていると、
65万円が控除額となります。
特典②事業専従者控除
青色申告で事業的規模の不動産賃貸業に専従する生計一親族に対する給与は、
経費に算入することができます。(税務署に届け出た金額が限度となります。)
白色申告の場合も同様です。
ただし、経費になる金額は、支払額に関係なく、
配偶者が86万円、それ以外は一人50万円となります。
(それぞれ、この経費計上前の不動産所得を専従者数+1で割った金額が限度です。)
特典③貸倒損失の経費計上
未収賃料が貸倒れた際、事業的規模ですと、貸倒れた金額がその年の経費となります。
事業的規模以外ですと、
その年の経費ではなく、その未収賃料が発生した年に遡って収入を取り消す
こととなります。
例えば、平成26年に不動産収入に計上された100万円の未収賃料が、
平成29年に貸倒れた場合です。
事業的規模でなければ、平成29年の経費ではなく、
平成26年に100万円の収入がなかったものとなります。
つまり、平成26年は収入100万円分多く申告したので、
税務署に納めすぎた税金を返すよう、更正の請求をする必要があります。
特典④資産損失の経費計上
賃貸収入の基となった建物の取壊し等による、
損失の金額(取壊し直前の帳簿価額など)については、
事業的規模ですと、全額経費となります。
事業的規模以外ですと、
その損失の金額以外の不動産所得が限度となります。
例えば、
賃料収入が100万円
損失の金額50万円
その他の経費が70万円の場合
損失の金額のうち、30万円(100万円-70万円=30万円<50万円)
しか経費に計上できません。
この他にも、賃貸収入の計上基準、利子税の経費算入などがあります。
事業的規模の注意点
事業的規模にすることにより事業税が発生する可能性があります。
そのため、賃貸規模を大きくする際には、上記のメリット以外にも、
事業税の発生や出費、負担の増大などデメリットも考えましょう。