国際税務Vol.16 トランプの米国税制改正
トランプの米国税制改正
国際税務Vol.16
SUパートナーズ税理士法人 阿部です。
トランプ大統領の下で劇的な税制改正が行われようとしています。
世界一高い法人税率の国が、
世界で最も法人税率の低い国になろうとしているのですから。
驚きの一言に尽きます。
2017年9月、トランプ大統領の下、政府と議会共和党は、
「崩壊した税法を改正するための統一的枠組み」を公表しました。
その内容は、法人税率を20%以下に引き下げ州税を入れても
24%台の低税率国に変身しようとするものです。
米国の法人税といえば、1986年のレーガン税制の抜本改革により、
高い税率(39%)、全世界課税方式、
VAT等の付加価値税はなしという路線が維持されてきました。
それが、ここにきて大方針転換を図ったのです。
減税の景気効果によりどの位税収増が実現されるのか不明なところもありますが、
米国経済の活性化のため、
180度方針転換が図られ、これまでの世界一高い法人税率を維持する国家から、
アイルランド並みの低税率国家へと変身してゆくのです。
日本でこのような税制の大改革が行われたことがあるのかと翻って見れば、
戦後の敗戦のなか、
外圧により実施されたシャウプ勧告にもとづく税制大改革位ではないでしょうか。
米国大統領の持つ権限・リーダーシップと、
日本の政治体制の違いをまざまざと見る思いがしています。
また、トランプ大統領個人の問題はここではさておき、
失敗を恐れぬ勇気と決断力には驚きを禁じえません。
この改正では、これまで米国企業はどこで事業活動をしようと
全世界所得に対して課税するという原則の守護神のような国でしたが、
ケイマン、バミューダ等の軽課税国にある海外子会社に留保された資金が
2015年に累積で2.6兆ドル(訳260兆円)なったことを踏まえ、
海外子会社からの配当金を非課税にして、資金の還流を推進する税制改正を導入し、
ついに全世界所得課税の国という看板を下ろし、領土主義課税国に仲間に入ろうとしています。
今から、約30年前国際課税の勉強を始めたころ、
先進国の課税制度は全世界所得課税で、開発途上国は領土主義課税というのが常識だった頃と比べて隔世の感があります。
小国にかかわらず大国であっても、生き残りをかけて、
大胆な税制改正を実施しなければならない競争の激しい経済環境にある
といえるのではないでしょうか。
日本の閉塞感の中、それを吹き飛ばすような、
中小企業を元気にさせるような税制改正を大胆に実施して欲しいものです。